「ドラッカー塾®成果発表会2025レポート」 ドラッカー公認マネジメント・プログラムを修了した経営者が、自社の取り組みを発表するイベント開催

株式会社ダイヤモンド社 HRソリューション事業室(ダイヤモンドHRD総研)

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  • ダイヤモンドHRD総研

ドラッカー塾®成果発表会は、ドラッカー塾®「トップマネジメントコース」修了生向けのイベントです。修了生のなかから一社に発表者となっていただき、塾で学んだことを踏まえて、自社でどのような取り組みを行っているのかを講師の国永先生、他の修了生に向けて発表するものです。

今回はコマニー株式会社様(石川県小松市)が発表者となり、32名の「トップマネジメントコース」修了生にご参加いただき、6月17日にコマニー様の本社で開催されました。

 この記事では、コマニー様の発表内容を中心に、今回の成果発表会を紹介します。

ドラッカー塾®成果発表会とは

「マネジメントの父」P.F.ドラッカー。そのドラッカー公認のマネジメント・プログラムである「ドラッカー塾®」ドラッカー塾®成果発表会は、講師の国永先生が生前のドラッカー氏から直接アドバイスを受けたことで始まりました

修了生が塾で学んだことを踏まえて、自社でどのような取り組みを行っているのかを、国永先生、他の修了生に向けて発表していただくイベントです。発表者が塾での学びの成果を参加者に還元することで、それに刺激を受けた他の修了生が次の発表者になっていくという好循環が形成されることを目指しています。

※ドラッカー公認のマネジメント・プログラム「ドラッカー塾®」にご興味がある方はこちら

ドラッカー塾®講師 国永秀男先生

ドラッカー塾®講師 国永秀男先生

今回はコマニー株式会社様(石川県小松市)が発表者となり、32名の「トップマネジメントコース」修了生にご参加いただき、6月17日にコマニー様の本社で開催されました。

ドラッカー塾®成果発表会2025ダイジェスト

コマニー株式会社の概要

コマニー株式会社様は石川県小松市に本社を置く、パーティション(間仕切り)の開発、設計、製造、販売および施工等を行うパーティションのリーディングカンパニーです。従業員数1,236名(連結)、売上高:33,623百万円。代表取締役社長執行役員の塚本健太様、取締役専務執行役員の塚本直之様は、ご兄弟で同時にドラッカー塾®「トップマネジメントコース」で学ばれました。
※従業員数、売上高は2024年12月31日現在のもの

 1961年に小松キャビネット株式会社として創業。その後主力商品がキャビネットからパーティションとなり、1970年に社名を株式会社コマツパーティション工業に変更しました。1984年に現在の社名、コマニー株式会社となりました。

 2019年に塚本健太様が社長に就任し、「間づくりカンパニー」を標榜するようになり、人の幸福を中心とした間づくりに邁進されています。間仕切りメーカーから間づくりカンパニーへの進化は、塚本健太社長、塚本直之専務のドラッカー塾®での学びが大きく影響しています。

コマニーの理念経営についての講演

成果発表会の最初のパートは、コマニーの理念経営についてのご講演です。代表取締役社長執行役員の塚本健太様、取締役専務執行役員の塚本直之様にご登壇いただきました。

コマニー株式会社代表取締役社長執行役員 塚本健太様

コマニー株式会社代表取締役社長執行役員 塚本健太様

コマニー株式会社取締役専務執行役員 塚本直之様

コマニー株式会社取締役専務執行役員 塚本直之様

1.我々は、間づくりカンパニーである

二人の講演に共通していたのが、ドラッカー塾®に参加して一番悩まされたのが、「ドラッカー5つの質問」の第1の質問「我々の使命(事業)は何か?」であるという点です。

1-1 我々の事業は何か?

「我々の使命は何か?」という問いに対しては、コマニーには以前から「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献する」という経営理念があり、これを適用できるので悩むことはなかったと言います。

 しかしながら、第1の質問は「使命」の後にカッコ書きで「(事業)」とあります。「我々の事業は何か?」と考えたとき、前述のコマニーの経営理念には事業についての言及がありません。そこから「我々は間仕切り(パーティション)を製造しているが、『我々は間仕切りメーカーである』という説明の仕方で良いのか」という疑問に直面しました。

1-2 「間づくりカンパニー」の誕生

解決の糸口となったのは、ドラッカー塾®で学んだ「顧客が欲しいのはドリル(製品)ではなく、穴を空けること(価値)である」という「ドリルの穴理論」でした。「コマニーにとっての『ドリル』は間仕切り(パーティション)である。それではコマニーにとっての『穴』は何なのか」という視点から、事業についての検討を重ねました。

こうして辿り着いたのが、「我々は、間づくりカンパニーである」という事業定義です。コマニーにとっての「穴」(価値)は「間づくり」であるという結論に至りました。「すぐれた間」とは何かを考え、間づくりによって幸福(しあわせ)をカタチにするのが「間づくりカンパニー」です。

 「間づくりカンパニー」という結論のみならず、それを導き出すために、「我々の事業は何か?」という質問に真摯に向き合い、真剣に悩み、繰り返し問い続け、考え抜いたプロセスの中にも学ぶべき点が多くありました。

2.我々はどうすれば幸福(しあわせ)になれるのか

「間づくりカンパニー」の話と並んで、二人の話に共通していたテーマが「幸福(しあわせ)の追求」です。

 2-1 コマニーが考える幸福とは

コマニーには初代社長の塚本信吉氏(塚本健太社長、塚本直之専務の祖父)が1968年に定めた5つの社是があり、現在も継承されています。その1つが「我等は余暇を楽しみより豊かで幸福な人生を送るべきである」というものであり、今でいう「ウェルビーイング経営」を当時から志していました。

 前述の経営理念にも「全従業員の物心両面の幸福を追求する」と明記されています。また、コマニーでは「幸福とは、人道と友愛に生きることである」と定義しています。人道とは、成長と貢献に喜びを感じる生き方を指します。友愛とは、自分も自分以外のすべての人も愛する心を指します。信頼できる仲間とともに成長と貢献を実感していく過程そのものが幸福に直結するという考えが、コマニーのウェルビーイング経営のベースとなっています。

2-2 社員の幸福を追求することで数値目標を達成する

塚本健太社長の「経営観のパラダイムシフト」の話は、インパクトのあるものでした。それまで「高い数値目標(=高業績)を達成することで幸福になる」という考え方でしたが、2年前に「社員の幸福を追求する(=社員がいきいきと働いている状態にする)ことで数値目標を達成する」という考え方に改め、卵と鶏を入れ替える決断をしたというものです。決断直後は「本当にこれで業績が向上するのか、低下するのではないか」と正直怖かったそうですが、業績は伸びており、決断の正しさが証明されています。

2-3 全従業員がパーソナルミッションを持つことでいきいきと働く

塚本直之専務からは、「我々はどうすれば幸福(しあわせ)になれるのか」という観点から、ウェルビーイング実現の具体的な方策を、個人の行動、個人のマインド、チームの関係性・文化、制度・仕組みという4つの視点から、ご紹介いただきました。

 個人のマインドに関する方策の1つが「パーソナルミッション」です。今回5名のコマニーの経営者・経営幹部等にご登壇いただきましたが、全員が講演の中で自身のパーソナルミッションを表明されていました。この5名に限らず、コマニーでは全従業員がパーソナルミッションを持ち、自分の人生のビジョンを描いています。従業員が自分の働き方の拠り所となるミッションを持ち、それを会社の経営理念とうまく連動させることが、力強く、いきいきと働くことにつながると感じました。

3.間づくり研究所~コマニーの全従業員が研究員

コマニーでは間づくりの推進母体として、2023年4月10日を「よい間の日」と設定し、「間づくり研究所」を設立しました。社内で起きている問題は絶対に他の会社でも起きているという考えから、まず社内の間づくりに取り組んでいます。

 塚本直之専務から社内の間づくりの例として、工場勤務社員のエンゲージメント向上を意識した工場でのスタバ(スターバックス)設置、プレゼンティーズム(※)改善を意識した本社棟でのハーブティーが飲めるリフレッシュ・エリア設置などをご紹介いただきました。これらの間づくりには、本社棟勤務の社員が工場へ出向いたり、工場勤務の社員が本社棟に出向くことで、新たな社員同士の交流が生まれる効果もあります。
※プレゼンティーズム:従業員が心や身体の調子がよくないまま出勤し、業務の生産性が低下している状態

間づくり研究所はコマニーの全従業員が研究員です。社員がコマニーの名刺がなくなり新たに発注すると、裏側は「間づくり研究所」の名刺が印刷されているという仕掛けで、社員の研究員としての意識を高めています。この取り組みに国永先生も感心していました。

二人の講演を聴いていて、経営者として学ぶことを大切にしている点が印象的でした。トップが学び続けることを率先垂範することが、組織全体にポジティブな影響を与えているのではないでしょうか。

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事業所、工場の見学

経営者の講演に続き、本社棟および工場を見学させていただきました。

 自分たちの働き方をより良いものにする間づくりが、エンドユーザーへの間づくり提案にもつながっていくため、本社棟自体がショールームのような機能も担っています。

 本社棟は築40年の建物を内装の工夫だけで、どれだけ「間」を変えられるのか、というのが見学ポイントになっていました。エントランス以外は使っている商品もスタンダードなもので、天井の色の塗り分けや部屋の奥まで見通せる造りで、部屋の印象が変わることを体感できました。また、ハーブティーが飲めるリフレッシュ・エリア、自分の仕事のスタイルに合わせて働く場所が選べる間づくり、経営陣と社員の接点が増える間づくりなどをご紹介いただきました。

工場では製造工程の見学に加えて、先に述べた工場内でのスタバ設置も見学させていただきました。コマニー商品で造られたブース内にスタバのコーヒーマシンが設置されていますが、単なるカフェ・スペースではない、さまざまなコミュニケーションが生まれる間づくりとなっていました。

現場から見た理念経営の実践についての講演

成果発表会の最後のパートは、現場から見た理念経営の実践についてご講演です。研究開発本部長の中川純一様、販売企画推進部長兼経営企画部長の千葉倉司様、経営企画本部室の有江晴花様の3名にご登壇いただきました。
※ご登壇者の所属部署・役職は成果発表会当時のものです。

1.開発者として「ドラッカー5つの質問」を実践する

研究開発本部長の中川純一様には、研究開発本部の業務を「ドラッカー5つの質問」の観点から、ご説明いただきました。会社の経営理念を踏まえて部門(研究開発本部)の使命、顧客、価値、成果が明確化されており、ドラッカーマネジメントの考え方が経営幹部や部門にもしっかり落とし込まれていることを実感できました。また、開発者目線ならではの「ドラッカー5つの質問」の捉え方はとても新鮮でした。

 さらに、「チームの力で『間』をつくる」というテーマで、研究開発本部の取り組み事例をいくつかご紹介いただきました。たとえば、部門間の引き継ぎ工程を“共創”として捉え、部門と部門の間に境界線を引くのではなく、重なり合う“バトンゾーン”をつくるという取り組みは、部門間連携等を促す「間づくり」として興味深くお聴きしました。

2.物件・案件を追う営業から間づくりの提案へ

販売企画推進部長兼経営企画部長の千葉倉司様は、ドラッカー塾®「エグゼクティブコース」修了生です。今回は営業系と経営企画系を兼任する立場から、主に顧客や広報についてご説明いただきました。

 顧客について、コマニーのビジネスは「メーカー(コマニー)→代理店→ゼネコン→設計士・デザイナー→エンドユーザー」という長い商流が形成されており、この中の誰を顧客とするのかはさまざまなアプローチが考えられます。塚本健太社長のご講演の中でもドラッカー塾®の影響を受けたことの1つが、「我々の顧客は誰か?」という質問であり、現時点での結論は「我々の顧客はエンドユーザー・利用者である」というお話がありました。

 それを踏まえて、千葉様から「間仕切りメーカー」から「間づくりカンパニー」へ視点を変えることで、物件・案件を追う営業から、エンドユーザーに対する間づくりの提案へ変化したことをご解説いただきました。「我々の顧客は誰か?」という問いを深く考えることで、営業や企画がどのように変わるのかがよく理解できました。

3.ドラッカーマネジメントで一般社員も幸福に働いている

経営企画本部室の有江晴花様には、2月に東京で開催した「3時間で学ぶ“ドラッカーマネジメント”」にもご参加いただきました。今回は自身の使命を「ドラッカーマネジメントで経営されているコマニーでは、一般社員も幸福に働いていることをお伝えすること」と定め、ご講演いただきました。大好きなコマニーや自身の仕事について、いきいきと話す有江様の様子を見れば、それだけで幸福に働いていることが伝わってきました。

 ドラッカーマネジメントが目指すものは「働く人の幸福と自由」であり、有江様のようないきいきと働く社員の存在が、ドラッカー塾®の成果であると説明できると思います。

 3名の講演をお聴きしながら、ドラッカーマネジメントが経営者だけのものではなく、経営幹部、さらには一般社員にも浸透していることに感心しました。

 国永先生の講評、懇親会

成果発表会の後は金沢市内のホテルに移動し、懇親会が行われました。国永先生、参加者に加えて、コマニー様の登壇者5名にもご参加いただきました。

 懇親会の冒頭に、国永先生から成果発表会のご講評をいただきました。今回の発表会から学べることとして、楽しく、幸せに経営ができることを経営者が学ぶべきであるというお話がありました。経営者の気分がネガティブになると、その組織で働く人たちはなかなかポジティブになれないので、経営者が自分の意識をあえてポジティブに持っていくことが大切であるというものです。

 懇親会では、参加者が国永先生や他の修了生と活発に交流されていました。ドラッカーマネジメントという共通の基盤を持つ経営者同士だからこそ理解し合える絆があるように感じました。

最後に

今回は約5年ぶりに開催されたドラッカー塾®成果発表会でした。ご登壇者がそれぞれの立場から、ドラッカー塾®およびドラッカーマネジメントに関連づけたご講演をしていただけたことで、より多くの学び、気づきが得られる機会となりました。「次は自分が」という刺激を受けた、参加者もいたのではないでしょうか。

 コース修了後も、このような学びのコミュニティが継続されることもドラッカー塾®の大きな魅力です。

 最後に、ご協力いただいたコマニー様に心より感謝申し上げます。「間づくり」のプロフェッショナルの多大なご協力により、成果発表会という「間」を実りあるものにすることができました。本当にありがとうございました。

今後もドラッカー塾®成果発表会の「間づくり」をより良いものにしていきたいと思います。

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