採用選抜だけではもったいない!? 入社後教育における適性検査の3つの活用法
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- ダイヤモンドHRD総研

近年、人事の領域でも「データ活用」の動きが急速に進んでいます。個人の能力やパーソナリティ特性を数値化する適性検査は、これまで主に採用選抜(スクリーニング)のために用いられてきましたが、今後は、人と組織の状態や傾向を表す「変数」の一つとして、より幅広い視点で人事施策に活かすことが重要になっていくでしょう。
もしかすると苦手意識を持つ方もいるかもしれませんが、高度な統計分析をすることだけが「データ活用」ではありません。また、厳密な分析をするとなれば、調査設計やデータ収集をはじめとして、多大な手間とコストがかかってしまいます。最初から複雑で難解なことに取り組もうとすると「労多くして功少なし」にも陥りかねません。
データ活用の第一歩としては、適性検査を活かす場面を「採用」から「入社後教育」まで広げることをおすすめします。そのための参考として、この記事では、ダイヤモンド社が提供するDPI(職場適応性テスト)とDIST(ストレス耐性テスト)の事例を用いつつ、入社後教育における適性検査の活用法をご紹介します。
活用法① 適性検査で新人&若手の成長を促進する
ビジネスパーソンに求められる能力は多岐にわたりますが、近年、リーダーシップ開発の領域で「自己認識(セルフ・アウェアネス)」という概念が注目を集めています。
変化の激しい現代社会において、新しい価値や競争力を生み出すためには、紋切型の知識やスキルを身につけさせるのではなく、一人ひとりに異なる強みや専門性、価値観を発揮してもらう必要があります。こうした多様な「個性」を活かす組織やチームをつくるためにも、まずは各自が「自己(自分自身)」について理解することが欠かせません。
適性検査は、受検者の能力やパーソナリティ特性を評価するにとどまらず、受検者本人が自らの行動傾向や考え方、強み・弱みを理解するためのツールとして活用することもできます。ここでは「DPI(職場適応性テスト)」の事例をご紹介します。

この事例では、入社半年後のフォロー研修の事前課題として「DPI」を受検してもらい、研修中に診断結果のフィードバックをおこなっています。診断結果をもとに自分の特徴を理解したうえで、半年間の経験を振り返り、今後の行動目標を立ててもらいます。
このとき注意したいのが、「弱み(得点が低い特性)」だけにフォーカスしないということです。私たちはついネガティブな要素に目がいきがちなため、意識的に「強み(得点が高い特性)」に着目し、それを発揮した成功体験を振り返り、次の行動目標を立てることが重要です。強みの発揮・伸長を促し、モチベーション向上にもつながります。
適性検査を活用するメリットの一つに、世間一般の水準と照らした客観的な評価が分かるという点が挙げられます。適性検査の診断結果が、それまでの自己認識と一致する場合には「自信」に、異なっている場合には「気づき」につながります。適性検査を媒介にすることで、ただ経験を振り返るだけよりも、深い自己認識を促すことができるでしょう。
活用法② 適性検査でOJT&部下指導を支援する
厚生労働省のデータでは、21卒の就職後3年以内離職率は、過去15年間で最も高い割合となりました(大学卒 34.9% 短大卒 44.6%)。人手不足が加速する中、新入社員をはじめとする人材の「定着(離職防止)」は、重要な人事課題の一つになっています。
離職にいたる要因はさまざまですが、その一つに「職場や業務への不適応」が挙げられるでしょう。研修(off-JT)の機会があるとしても、大半を占めるのは、各々が配属された職場での時間と経験です。新入社員の職場適応と定着を促すためには、職場におけるOJTや部下指導をいかに充実させるか、という視点を欠かすことはできません。
適性検査は、職場の上司やOJTトレーナーの立場から、部下の行動傾向や考え方、強み・弱みを理解し、一人ひとりに合った育成方針や関わり方を考えるためのツールとして活用することもできます。ここでは「DIST(ストレス耐性テスト)」の事例を紹介します。

この事例では、OJT研修の中で、配属先の上司とOJTトレーナーに、採用時に受検してもらった「DIST」の診断結果をフィードバックしています。研修では、診断結果をもとに配属される新人の特徴を理解したうえで、指導時に意識することを整理してもらいます。
ストレス耐性テストの場合は、「どんな場面や状況でストレスを感じやすいのか?」「まわりの人を頼るのが得意なのかどうか?」といったことを読み取ることができます。もちろん苦手なことにも挑戦してもらう必要はありますが、最初のうちはサポートを厚くしたり、反対に、得意なことは手を出しすぎずに任せたり、といった方針を立てられます。
実際に職場で接する中で気づける部分かもしれませんが、人によっては、相手から助けを求めてこないのであれば平気なのだろうと判断してしまう方もいます。適性検査を使って配属前に新入社員の特徴を把握し、対策を立てることで、より円滑な職場適応を促すことが狙いです。職場によって新人指導に差があるといった課題の解決にもつながります。
活用法③ 適性検査で成果につながる行動特性を見つける
採用選抜においても、入社後教育においても、適性検査を効果的に活用するために欠かせないのが、「自社で成果をあげるための行動特性」を明らかにすることです。
例えば、同じ営業職であっても、企業によって、扱っている商材の特徴や価格帯、顧客の属性などは大きく異なっています。また、商材や顧客が似ていても、組織の文化や風土、そこで働く人々のタイプはさまざまです。世間一般的に優秀だからといって、あるいは、他社で活躍しているからといって、必ずしも自社で成果をあげられるとは限りません。
採用精度や育成効果を高めるためには、自社で活躍する人材が持ち合わせている行動特性を見極める必要があります。人事担当としての経験則や現場へのヒアリングも参考になりますが、客観性や説得力という観点では課題があるかもしれません。そこで有効なのが、適性検査を活用して、成果につながる行動特性を分析する方法です。

この事例では、社内の営業職に「DPI(職場適応性テスト)」を受検してもらい、業務成績における上位層・中位層・下位層の平均点を比較しています。成績上位層は全体的に得点が高い傾向にありますが、特に「協調性」「自主性」「自己信頼性」「指導性」の4つの特性において、下位層との差が大きいことが読み取れます。
その後、これらの4つの特性を踏まえて、実際の職場や営業の文脈に落とし込んだ「行動目標」を設定し、営業職向けの研修を実施しました。加えて、個人面談を行い、診断結果をフィードバックしながら、今後のアクションプランの具体化を支援しています。
このように、適性検査の診断結果と、業務成績や人事評価などの指標と組み合わせることによって、成果をあげるための行動特性を分析することが可能です。伸ばすべき行動特性を明確にするだけでなく、受検者本人への診断結果のフィードバックにより、研修や職場育成にシームレスに役立てることができます。また、こうして明らかになった成果につながる行動特性は、もちろん、採用基準としてもご活用いただけます。
まとめ
今回の記事では、「①適性検査で新人&若手の成長を促進する」「②適性検査でOJT&部下指導を支援する」「③適性検査で成果につながる行動特性を見つける」の3つのテーマで、入社後教育における適性検査の活用法をご紹介いたしました。
従来の採用選抜(スクリーニング)だけでなく、入社後教育まで見据えることで、適性検査をさらに効果的・効率的に使いこなしてみてはいかがでしょうか?
記事構成・編集
ダイヤモンド社 HRソリューション事業室 広瀬一輝
1993年生まれ、高知県出身。2016年に新卒でダイヤモンド社に入社。書店営業部を経て、17年よりHRソリューション事業室で人材開発事業に携わる。適性検査、動画教材、研修プログラムなどの企画開発のほか、HD領域の書籍編集を担当。趣味は読書(SF・ミステリ)とオンライン将棋。
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