採用プロセスに適性検査を導入する7つのメリット
- ダイヤモンドHRD総研
「なかなか人材が定着しない」
「面接では良い印象を持ったが...」
「採用したものの、期待通りに育たない」
このような悩みを抱えている採用担当者の方も少なくないでしょう。解決策として、採用プロセスの見直しや社員研修の改善を検討している企業も多いかもしれません。実は、これらの課題は、人材育成や採用面接そのものに原因があるわけではないケースが多々あります。
結論から言うと、これらの課題は面接の前段階で解決できることが多いのです。その解決方法の一つが、適性検査の効果的な活用です。
この記事では、適性検査を導入した企業の実際の事例を基に、採用プロセスにおいて適性検査を導入することによる7つのメリットを、株式会社ダイヤモンド・ヒューマンリソースの金子幸平氏が解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、貴社の採用活動のヒントとしてお役立てください。(株式会社ダイヤモンド社 人材開発編集部)
ポイント1:「適性検査でミスマッチを防ぎ、採用コストを抑制」
面接や応募書類だけでは、応募者の性格や職務適性を正確に把握することは難しいでしょう。そのため、「社風が合わない」といったミスマッチが起こりやすくなります。さらに、退職につながれば、再募集やこれまでにかけたコストが無駄になってしまいます。しかし、適性検査を活用することで、応募者の潜在的な能力や特性を客観的に評価でき、このような状況を減らすことが可能です。
たとえば、ある企業では、1回の募集で1,000人以上の学生が集まるため、全員と面接することが物理的に不可能でした。そのため、履歴書をもとに選抜を行うのですが、性格や向き不向きが判断できず、自社に合わない学生も面接に進めてしまっていました。そこで「自社にマッチした人材を選びたい」という要望があり、適性検査を導入した事例があります。
このように、適性検査を実施することで、企業風土や業務内容との適合性を事前に確認できるため、入社後のギャップを最小限に抑えることができるのです。
ポイント2:「面接評価ポイントのばらつきを適性検査で統一」
面接では、どんなに気をつけても、面接官の主観や経験が評価に影響を与えてしまいます。そのため、面接官によって評価が大きく異なることも少なくありません。
たとえば、ある企業では、面接に現場の責任者も同席するようにしていました。しかし、面接の知識が乏しく、何を基準に判断すれば良いかわからないため、最終的に人事の判断に依存してしまい、同席する意味がなくなっていました。
適性検査を導入することで、客観的かつ数値化された結果を事前に共有でき、面接官全員が同じ視点で評価を行えるようになりました。
このように、適性検査の結果を基準に評価ポイントを統一できるため、評価理由を効果的に比較・検討できるというメリットがあります。
ポイント3:「採用バイアスを排除する適性検査の効果」
人は無意識のうちにバイアスを持っており、それが採用判断に影響を与えることがあります。
ある企業では、体育会系の学生は上下関係や規律に厳しい環境で生活してきたため、メンタルが強いと判断していました。しかし、入社後に仕事が原因で精神的に参ってしまい、休職することになりました。この出来事をきっかけに、思い込みやイメージに基づく採用は危険だと判断し、適性検査を導入した事例があります。
このように、見た目や学歴などのバイアスが評価に影響を及ぼすケースは少なくありません。適性検査を活用することで、これらのバイアスを最小限に抑え、応募者の能力や適性を客観的に測定できるため、個人的な印象や偏見に左右されない判断が可能になります。
ポイント4:「適性検査で『強み』を見逃さない採用戦略」
面接では、その場の質問の受け答え方から受ける印象で全体的な評価を下してしまう(ハロー効果)ことが多いため、面接では気がつきづらい応募者の「強み」を見逃してしまう可能性があります。
たとえば、面接では大人しい印象だった応募者が、適性検査の結果では、「思考性」や「自主性」に高い特徴が見られた、というケースです。
この場合、仮に営業職を募集している企業であれば、この人物は新規開拓よりもコンサルティング型の営業職務で活躍する可能性がでてきますので、不合格とすることは機会損失になるかもしれません。
適性検査を活用することで、面接だけでは見えない部分が見えるようになり、履歴書では気づけなかった高いポテンシャルを持つ人材を発掘できる可能性もあります。また、適性検査の結果をもとに応募者ごとの強みのポテンシャルを見出すことで、その人の特徴にあった育成支援も可能になります。
ポイント5:「採用コスト削減を実現するWeb適性検査の効果」
適性検査の導入は、採用プロセスを効率化できるという点でも大きなポイントです。
効率化の例として、ある企業では、これまで対面での面接を行なっていたため、各地に赴いていましたが、時には数人のために現地に行かなければならず、採用コストが大きく非効率でした。そのため、Webの適性検査を導入したケースがあります。
当初は採用プロセスを全てWebに切り替えることで、母集団が集まりにくくなるのではないかと懸念していましたが、実際には採用活動の工数が1/3に減り、受験人数も従来と変わりませんでした。むしろ、コストが削減され、効率化に成功しています。
このように、Webサービスを導入することで、採用にかかる時間やコストを削減し、採用担当者の負担を大幅に軽減できるメリットがあります。
ポイント6:「適性検査で企業イメージと現実のギャップを乗り越える人材を採用」
就職活動において、有名企業やブランド力、企業イメージに惹かれて応募する学生は少なくありません。たとえば、ホテル業界やブライダル業界などが顕著な例です。
華やかな一面しか見えていないことが多く、実際に働いてみるとクレームの多さや、職場がリゾート地にあるため、通勤帰りに遊べないなどの現実を目の当たりにし、そのギャップに耐えられず退職するなど、うまく対応できない新入社員が多いのです。
このような離職を防ぐために、ストレス耐性や変化対応力がある人を採用したいとの理由で、適性検査を導入した企業もあります。適性検査を通じて応募者の行動傾向や適性を事前に把握し、企業・業界特有の文化や働き方に適応することができる人材を採用することで、定着率が向上しやすくなります。
また、適性検査の結果を基にコミュニケーション能力が高い人材を営業部門に、分析力に優れた人材を企画部門に配置するなど、適材適所の人員配置も可能です。このように適性検査を活用することで、企業イメージと実際の仕事のギャップを解消し、離職を防ぐことができます。
ポイント7:「適性検査で応募者の本質を見抜く採用手法」
面接や履歴書では、応募者が自分の長所を強調し、自分をよく見せようとする傾向があります。しかし、実際に検証ができないため、そのまま鵜呑みにしてしまい、「思ったほど実力がなかった」といったケースも少なくありません。
このような時こそ、適性検査が有効です。たとえば、履歴書では経験豊富で実績もあり、面接でも好印象だったが、適性検査の数値が低かったため調べたところ、経歴に偽りがあったという例もあります。
これは極端な例ですが、面接で自分をよく見せようとする応募者は少なくありません。そこで注目すべきなのが信用尺度(=回答の信頼性を評価するための尺度)です。好ましくない判定結果が出た場合「その場しのぎ」や「正直に回答していない」と判断されます。
採用においては「実際に活躍できる能力を持っているか」を見極めることが重要です。適性検査を活用することで、応募者の本質的な特性を浮き彫りにし、面接だけでは見抜けない部分を見極めることが可能です。
まとめ:「適性検査で採用の成功率を高める方法」
適性検査の重要性やメリットは、まだ十分に理解されていないのが現状です。「人が集まらない」や「すぐに辞めてしまう」といった課題に対して、多くの企業は採用や育成に問題があると考えています。しかし、私は、採用の初期段階での見極めが不十分であることが問題だと考えます。
特に中小企業では、募集が集まらないため、適性検査を実施してまで不採用にする必要がないと考える会社も多いでしょう。しかし、人材を選べない環境だからこそ、見極めが重要です。誤った判断基準で採用すると、早期離職や組織力の低下につながり、結果的に企業にとってマイナスになります。
このように、適性検査は、将来的な問題を防ぐための「予防策」として効果的です。適性検査の導入には、ミスマッチの防止や評価基準の統一、バイアスの排除など多くのメリットがあります。また、応募者のポテンシャルを見極め、採用プロセスを効率化することで、時間とコストの削減も可能です。
さらに、適性検査を効果的に活用することで優秀な人材を確保しやすくなり、定着率が向上するメリットもあります。採用や人材育成に悩む人事担当者の方は、本記事を参考に適性検査を効果的に活用してみてください。
株式会社ダイヤモンド・ヒューマンリソース HD特販局 局長 金子幸平
東海エリアの自動車関連メーカー、地方銀行・信用金庫、エネルギー関連企業を担当。 また、中小企業の新卒・キャリア採用全般のコンサルティングを行い採用活動の定着化を支援。 大学のキャリアセンターや業界団体向けのセミナー講師も担当。2017年より、東京本社にてマネージャー職として大手金融、メーカー、ドラッグストア、外資系化粧品業界を担当。 アセスメントの導入から若手・中堅社員向けの研修を手掛け、 社内の若手メンバーの育成チームの責任者も担当。 趣味はサッカー観戦、散歩、ドライブ。
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