グローバル人材に求められる能力とは? 海外で活躍するために必要なスキルと育成ポイントを解説

株式会社ダイヤモンド社 HRソリューション事業室 副部長 御明宏章

  • ダイヤモンドHRD総研

採用・育成の現場でよく耳にするキーワードの一つに「グローバル人材」がある。日本は国を上げてグローバル人材の育成を目指しており、グローバル人材を重視する企業も増えてきた。一方で「グローバル人材の定義がイマイチわからない」「グローバル人材であると期待した社員が、海外であまり活躍できていない」といった声も聞く。  

そこで今回は、株式会社ダイヤモンド社 HRソリューション事業室 副部長の御明宏章が、グローバル人材に求められるものや、その育成方法、グローバル人材としての資質を測定する『グローバル人材診断プログラム D-GATE』について解説する。(ダイヤモンド社 人材開発編集部)

「グローバル人材」の選抜や発掘、育成に関する企業の悩み

 「グローバル人材」とは“海外で活躍できる資質を持った人材”を指します。少子高齢化や人口減少により国内市場の縮小が進んでいることから、近年は海外進出し、販路の拡大を図る企業が増えています。

 従来は大手企業が中心でしたが、中小企業にも広まっています。そのため、グローバルな企業活動に貢献できる人材の採用や育成は、多くの企業にとって急務です。

 しかし、グローバル人材の選抜や発掘、育成について悩みを抱える企業は多いです。人事担当者にヒアリングをすると、さまざまな声が上がってきますが、大きく以下の2点に集約されます。

① 誰をグローバル人材として選抜すればよいのかがわからない
② グローバル人材をどのように育成すればよいのかわからない

 グローバル人材を選ぶ基準が曖昧で、育てるノウハウもない場合、人選を誤ることは避けられません。その結果、現地での成果が芳しくないケースが多発し、企業は「出たとこ勝負」になりがちです。このような状況を改善するには、まずグローバル人材に必要な資質について理解を深める必要があります。

ダイヤモンド社主催:「海外活躍力」採用・育成セミナー資料より抜粋

「グローバル人材育成推進会議」が定義する必要な資質

  総務省は、グローバル人材の育成を推進するため、さまざまな施策を講じています。たとえば、日本人の海外留学の促進などですが、実情はコロナ禍でもあり減少しています。海外での学びや仕事に対する関心が低い若者が多いのも現状です。

 2011年から始まった小学校での英語教育の必修化や、高校や大学でのカリキュラム改革など、政府の一連の取り組みは、こうした状況を打破し、早期からグローバル人材を育成するためのものです。

 文部科学省の下で設立された「産学連携によるグローバル人材育成推進会議」は、グローバル人材に必要な資質として以下の要素を挙げています。

 要素Ⅰ:語学力・コミュニケーション能力

 要素Ⅱ:主体性・積極性、チャレンジ精神、協調性・柔軟性、責任感・使命感

 要素Ⅲ:異文化に対する理解と日本人としてのアイデンティティ

 要約すると、まず語学力とコミュニケーション能力に優れていることが大前提であり、主体性や積極性、異文化に対する理解を持った人材が求められていることがわかります。単に語学に堪能なだけではなく、総合的な人間力も重視されているのです。

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科学的な調査でわかった「海外活躍力」の中身

 これまで述べた内容は、「グローバル人材育成推進会議」による定義ですが、実際に海外で活躍した経験のある人材が持つコンピテンシー(行動特性)について、科学的に調査された国内の研究は少ないのが現状です。

 そこでダイヤモンド社は、人材開発・組織開発研究の第一人者である立教大学の中原淳教授(当時は東京大学大学総合教育研究センター准教授)と共同で「海外活躍力」に関する調査を実施しました。

 この調査は、大手業21社の協力を得て、多くの海外赴任者を対象に「赴任前」「赴任中」「赴任後」を追跡調査し、サンプルデータを分析することで、海外の組織に順応し、成果を上げる能力(海外活躍力)を明確にするものです。

グローバル人材に必要な5つの能力「海外活躍力」

ダイヤモンド社主催:「海外活躍力」採用・育成セミナー資料より抜粋

 調査の結果、海外で活躍する力が高い人材には、以下の5つの能力がバランスよく備わっていることがわかりました。

異文化対応力 ②戦略構想力 ③人材育成力 ④ 経験学習力  ⑤ストレス対処力

*プラスで伝導力 

 このうち②から⑤までは、国内での仕事にも必要な「基本の仕事力」と言えます。戦略を立てる力や新たな経験を活かす力、部下や後輩を育成する力などは、どの職場でも必要です。

特に⑤のストレス対処力は、海外赴任において重要です。日本とは異なり、海外赴任先では生活が不便になることが多く、ストレスが増すこともあります。そのため、ストレスをうまくかわす力や柔軟に対処する力が求められます。

 こうした力が不足しているために、ストレスフルな環境に適応できず、結果として海外赴任がうまくいかなくなるケースも多く見られます。家族のストレス対処力を調査するのは難しいですが、本人に一定のストレス対処力があるかどうかは、特に注目すべきポイントです。

異文化対応力があっても、基本の仕事力がなければ意味がない

 5つの能力のうち、4つが基本の仕事力で構成されていることからもわかるように、海外活躍力の基盤は基本の仕事力にあります。つまり、仕事ができるかどうかが重要です。加えて、語学力や異文化対応力も必要ですが、これらの能力を兼ね備えていることが求められます。

 世の中には、アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)によって、外国人を上に見たり下に見たりする人がいますが、海外赴任において偏見なく接することができなければ、本来の力を発揮することは難しいでしょう。

 最後に挙げた伝導力とは、物事をわかりやすく説明する力のことです。海外では、現地の人と上手に付き合い、日本の商習慣や文化をわかりやすく伝える場面が多くあります。それができないと、役立たずと見なされてしまい、コミュニケーションが途絶えてしまうこともあります。

海外活躍力を階層構造で考える

ダイヤモンド社主催:「海外活躍力」採用・育成セミナー資料より抜粋

「グローバル人材診断プログラム D-GATE」の活用方法 

 ダイヤモンド社では、ここまで紹介してきた海外活躍力に関する調査に基づき、『グローバル人材診断プログラム D-GATE』という適性検査を開発しています

 『D-GATE』とは、異文化対応力(戦略的社交力、日本発信力、信頼構築力)や基本の仕事力(戦略構想力、傾聴力、仕事委任力、指導力、挑戦性、経験内省力、スルー力、想定外対処力)、伝達力(断言力、理念伝達力、議論徹底力、経験伝達力)を測る51の項目から、受検者のグローバル人材としての資質を見出すことができる適性検査です。

 『D-GATE』を受検した結果、不足している資質が明るみに出ることもあるでしょう。というより、元からグローバル資質を完璧に兼ね備えた人材はそれほど多くはありません。

D-GATEに関する詳しい資料、無料でお試しいただけるサンプル受検もございます。

 しかし、海外赴任前に補うべき部分がわかれば、研修などによって能力向上を図ることができます。また、現地で必要とされるものをきちんと理解しないまま赴任し、厳しい異文化ギャップに直面して焦る、という事態も予防できるはずです。

 つまり、『D-GATE』を足掛かりにして、有効なグローバル人材育成の手立てを考えることが可能になります。

 すでにグローバル人材の育成に着手している企業が、真に有効な対策を講じることができているかといえば、そうとも限りません。短期の語学研修や海外派遣研修、あるいはワンショットの研修などを行って、グローバル人材を育成した気になっているだけ、というケースも現実には散見されます。

 その結果が「グローバル人材であると期待した社員が、海外であまり活躍できていない」という事態を招き寄せているのです。

 同じ轍を踏まないためには、上辺の語学力などにとどまらない、海外活躍力のチェックが重要です。そのために、『D-GATE』などのアセスメントツールをうまく活用してみてください。

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株式会社ダイヤモンド社 HRソリューション事業室 副部長 御明宏章

新卒で大手自動車メーカーに入社後、1994年よりダイヤモンド社にて書店営業と広告営業を担当。その後、適性検査などの人材開発商品を手掛ける人材開発事業を担当。企業の人材育成を支援している。年間を通じて多数のセミナーに登壇しており、特に「内定者フォロー」セミナーは人気コンテンツとなっている。全国の代理店と連携し、中小企業の採用・育成に関するコンサルティングも実施。趣味はゴルフ。

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