採用のミスマッチを防ぐ適性検査の使い方
- ダイヤモンドHRD総研
採用活動では、しばしばミスマッチが発生しますが、人材の争奪戦が激化する中、ミスマッチはさらに頻発するようになっていると言えるでしょう。このミスマッチを防ぐためには、適性検査やストレス耐性テストなどのアセスメントツールが有効です。今回は、ダイヤモンド社のアセスメントツールを販売し、多くの人事担当者と接点を持つ株式会社ダイヤモンド・ヒューマンリソースの原真二氏が、現代の人事が直面する課題やミスマッチの問題への対応方法を解説します。(ダイヤモンド社 人材開発編集部)
多くの企業が求めるのは、どんな場面でも安定的に力を発揮できる人材
ダイヤモンド・ヒューマンリソースは、ダイヤモンド社が開発した適性検査(ストレス耐性テストなど)、教材、研修の販売を手掛けています。私はその営業活動の中で、多くの企業の人事担当者と接し、採用活動における課題や悩みを伺っています。
採用活動について話を伺うときは、実際の選考フローをたどりつつ、その過程のどのあたりにつまずきを感じているかをヒアリングします。問題解決に役立ちそうなツールがあれば提案し、より良い採用活動につなげることを目指します。
当然ながら、企業ごとに求める人材像は異なっています。具体的に、ある特定の能力を持つ人を求めるケースや、全般的に能力が高い人を求めるケースもあります。
多くの企業が強く求めているのは、「どんな場面でも安定的に力を発揮できる人材」です。
時折100点をとるものの、普段は50点のパフォーマンスにとどまる人よりも、常に安定して80点を出せる人材の方が重宝されます。野球で例えると、たまに特大ホームランを打つ選手よりも、ヒットを量産して高打率を誇る選手の方がチームへの貢献度が高いのです。
一方で、ごくたまにでも特大ホームランを放つ力を秘めた人も含め、多様な人材を採用していく方針の企業もあります。とある大企業は「可能性を狭めることなく、間口を広げて採用活動を展開したい」という意向で、普通ならキワモノ扱いされてしまうような人材でも、光るものがあれば採用するとのことでした。たしかに、そのような一風変わった人材が、入社後にトップセールスマンになるなど、目覚ましい進化を遂げるパターンはしばしば見受けられます。
履歴書や面談だけでは見えづらい相手の本質が浮き彫りになる
求める人材像が変われば、適するアセスメントツールも変わります。そのため、私は人事担当者へのヒアリングを基に、その企業に最適な適性検査やストレス耐性テスト、研修などを提案しています。最近特に注目度が高いものは、ストレス耐性を測るテスト「DIST」です。
仕事をする上で、ストレス耐性は重要です。社会に出ると、学生時代とは比べ物にならないほどストレスにさらされる機会が増えます。ストレスにどう対処するかを個々人で考えることが求められます。
DISTは、「対人面」「対課題面」「対役割面」「対環境面」の4領域で、その人がどの程度のストレス耐性を持っているか、ストレスにさらされたときにどう対処するかを測定します。採用時に利用できるほか、定期的に実施して個人や部署の変化をモニタリングし、ストレスの負荷を見極めることも可能です。
人事担当者から「ストレス耐性のある人材を採用したいが、良いツールはないか」と直接的に相談されることは少ないですが、採用のミスマッチを防ぎたい、安定して力を発揮できる人を探したいという要望には、ストレス耐性に着目することを提案する場合がよくあります。ストレス耐性を見ると、履歴書や面談だけでは見えづらい相手の本質が浮き彫りになるからです。
とある商社のケースですが、多くの学生が憧れる人気の就職先であり、入ってくる新入社員は一様に優秀で、コミュニケーション能力も高い優等生ばかり。当然、手間暇かけてじっくり選考しているのですが、例年早々と離職してしまう人が一定数出る、と人事担当者は頭を悩ませていました。
そこで試験的にDISTを導入し、新入社員にテストを受けてもらいました。その結果、DISTの対処資質(ストレス解消行動傾向)のチェック項目で、多くの受検者が「自己効力感」や「タフマインド」を強く持っている一方で、思考や感情のコントロールが弱く、他者を頼ることが苦手であるなど、柔軟性に欠ける傾向が強いことがわかりました。
学生時代の実績や“ラベル”だけでは見えてこないもの
上記の事例に限らず、DISTでこのような結果が出ることはよくあります。面談での評価が高く一見タフそうな優等生でも、ストレス環境下で実力を発揮できるかは別問題です。仕事がうまくいかないときに周囲を頼ったり、気持ちを切り替えたりする柔軟性がなければ、いくら優秀でも簡単に挫けてしまう可能性があります。
柔軟性がない要因はいくつも考えられますが、学生時代に“うまくいかない”や“ままならない”と感じる体験が少なかったことが挙げられます。
採用の過程では、学生時代に力を入れたことや、残してきた実績などを聞くことで、その人のポテンシャルを測ろうとします。しかし、それはあくまで彼らが自ら選んだ、自らの得意分野における成果です。いざ仕事となれば、必ずしも自分が好きなこと、得意なことばかりを割り振られるわけではありません。むしろ、苦手なことや興味を持てないことに取り組まなければならない場面のほうが多いでしょう。
「キャリアの8割は偶然決まる」という言葉があるように、誰もが第一志望の企業や部署に就職できるわけではありません。予期しない企業や業務に就くことも多く、希望通りの職場に就職しても、好きなことだけをやれるわけではありません。
やりたいことをやって成果を上げてきた学生が、ままならない仕事に直面したときにどうなるか。乗り越える人もいれば、挫折する人もいます。その差はストレス耐性の高低によって生じると考えられます。
また、これまでは「体育会系」などの“ラベル”によって、相手のポテンシャルを測る慣例のようなものがありました。体育会系というと「精神的にも肉体的にもタフで根性がある」「上下関係が厳しい組織にいたから、礼儀正しい」というようなイメージがあるのではないでしょうか。
しかし、最近の体育会系は往々にして、このようなイメージと合致しません。上下関係が緩やかで、データ解析を重視するロジカルな練習方法を取り入れている団体も増えています。 特定のスポーツに打ち込んだ人ならではの資質はありますが、「体育会系=根性がある=ストレスに強い」という認識で判断することはミスマッチを招く可能性があります。実際、体育会系のラベルがあてにならないと感じる人事担当者も多いです。
近年、ダイバーシティ経営の推奨により、採用形態は多様化し、幅広い層から人材を確保できるようになりました。インターンシップ制度や職種別採用を導入する企業も増加しています。新卒採用の応募数が減少しつつある現在、アセスメントの重要性はますます高まっています。
ストレスにさらされたとき、どのように対応するパーソナリティの持ち主であるかを把握しておけば、採用ばかりでなく、その後の配属先を決めるときなどにも役立ちます。多様な人材を束ね、各人が末永く働きたいと思える環境を整えるために、多角的な判断軸を持つことが求められていると考えます。
株式会社ダイヤモンド・ヒューマンリソース HD営業局 HD首都圏営業2部 部長 原 真二
関西エリアのインフラ、金融機関、メーカーなどを担当して採用活動をコンサルティング。2016年に東京本社に異動し、総合商社、大手専門商社、デベロッパー、メガバンク、損害保険、生命保険を担当。採用コンサルティングに加えて、既存社員の人材開発コンサルティングも手掛ける。現在では採用・教育の範囲にとどまらず、VRコンテンツの提供、SNSの運用、社内イベントの企画など人事部の伴走者としてあらゆるサービスを企画・提供。
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