1on1とは? 効果的なコミュニケーションのための3つのポイント 【中原淳教授インタビュー Part3】

株式会社ダイヤモンド社 HRソリューション事業室 西村衣織 (リリー)

  • ダイヤモンドHRD総研

ダイヤモンドHRD総研・かけだし研究員リリーが、HR領域のエキスパートのもとへ学びに行く企画。いまさら聞けない、人事のキーワードについて教えてもらいます。第3回目は、人材開発/組織開発のエキスパート・中原淳先生に「1on1」について語っていただきました。(聞き手/ダイヤモンド社 HRソリューション事業室・西村衣織)

今回のインタビューは……

リリー

ダイヤモンドHRD総研・かけだし研究員の「リリー」です。

イノ

アシスタントの「イノ」だシシ!

リリー

本連載では、「人事・HRの領域でよく聞くけれど、実はぼんやりとしか理解できてないかも(汗)」なキーワードに関して、かけだし中の私が身体を張って、エキスパートの先生方に“諸突猛進”インタビューします。人事のみなさんに“こっそり”インプットいただける記事をお届けします!

イノ

今回の先生はどなただシシ?

リリー

前回は、立教大学の中原淳先生に「フィードバック」のポイントについて教えてもらいました。今回も引き続き、中原先生に突撃インタビューします!

イノ

今回は何を教えてもらうシシ?

リリー

今回のキーワードは「1on1」です。私も時々、上司や先輩と1対1で話し合う機会があるのですが、ここだけの話、何を話したらいいのか悩んでいます……。ということで、今回は「1on1」について中原先生にアドバイスをもらいたいと思います!

イノ

レッツゴーだシシ!

1on1とは「箱」である

リリー

中原先生、今回もよろしくお願いいたします!

中原

よろしくお願いします。

リリー

今回は「1on1」についてお聞きしたいです。上司と部下の面談というイメージがありますが、実際のところ「1on1」とは、何でしょうか?

中原

1on1は「ハコ」ですね。

リリー

ハコ......!?

中原

1on1という言葉の内実を、定義するのが難しいんです……。というのも、「1on1」とは、部下と上司による頻度を上げた定期的な面談のことを指し、1つの決まった形があるわけではありません。「仕事と関係のないことでもいいので話してください」という企業もあれば、「仕事でのモヤモヤを相談してください」という企業もあります。だから「ハコ」のなかに何をいれるかは、企業や管理職によっても異なるのです。また、「過去2週間を振り返って、印象的な出来事は何ですか」といったように、リフレクションを促す場合もあります。このように、同じ1on1でも、そこで何を行っているのかは企業によって様々なのです。

リリー

なるほど。共通の定義があるわけではないんですね……。

中原

小難しく考えないでOKです。1on1は、「箱」のようなものです。各企業の目的、管理職の考えに応じて、その箱の中に何を詰めるかは自由です。ですので、その箱には、面談や雑談も入り得ると思います。最終的なゴールを何に設定するかによって、各組織のやらなければならないコミュニケーションスタイルは全然違います。

リリー

企業のゴールによって、箱がデザインされていくのですね!

ベストな1on1の目的は「経験学習」と「目標設定」

リリー

中原先生が考える職場での1on1の一番いい活用法はありますか?

中原

1on1は「ハコ」ですが、私自身としては、この「ハコ」のなかで「経験学習を促進できるような会話が行えること」がベストですね。1on1では、本人が何か挑戦することや、日々業務の中でつまずいていることを振り返り、上司と一緒に作戦会議をして目標設定ができると理想です。

リリー

経験学習とは何ですか?

中原

端的に言えば、「経験学習」とは、挑戦をふくむ経験を為して、それを内省しつつ、学ぶことです。具体的には、自らの経験を振り返り、教訓を引き出し、次の機会に適用していく、学習サイクルのことを指します。経験学習は、成長につながる大切な学習の1つです。しかし、日々業務に追われる中で、自分自身で振り返りの機会を持つことはなかなか難しいのも事実です。1on1の場を活用して、経験学習のサポートをすることで、部下の成長を促すことができます。この部下の成長が、その先の企業の成長にも間接的につながっていくのです。

リリー

1on1は自由な箱でありながらも、部下の成長につながる場になるのが理想的なんですね。

中原

人材開発の定義に戻るとわかりやすいのですが、経営にインパクトをもたらさない施策は人材開発ではないとお伝えしたと思います。1on1を人材開発の施策の1つとして実施しているのだとしたら、本当はその筋で行きたいのです。

しかし、はるか手前で、そもそも上司と部下が一言も口を聞いていない職場や、関係性が崩壊している職場も多くあります。その場合、ウォーミングアップとして、まず趣味などの雑談から始めることもあります。人材開発に軸がありながらも、組織の状況によっては、準備体操として関係構築のステップを踏むべき場合もあるでしょう。

リリー

なんだか第1回のお話とつながった気がします! 1on1も目指すべきは、経営へのインパクトなのですね。

中原

企業が売上を伸ばしていくためには、いい戦略を掲げると同時に、戦略を動かす人の教育も重要です。経営にインパクトを残すという点で考えると、最終的には1on1では、経験学習の促進と目標設定ができるとベストですね。

リリー

ただ、実際のところ、1on1で業務進捗を共有する企業も多い気がします……。

中原

実際、ほとんどそうだと思います。現場としては、突然、面談をしろと言われても難しいのです。特に上司と部下で権力勾配がある中で、どこまで話せばいいんだろうと考えを巡らせた結果、「特にありません」となってしまうケースも多いです。

特に、経験学習のような、過去の出来事を思い出してもらい、振り返りを促すといったコミュニケーションは、私たちが普段慣れ親しんだものとは異なります。それを企業内、ひいては上司部下の間でやってもらうというのは、試行錯誤がないとすぐに定着するものではありません。

リリー

確かに、普段の会話の中で、過去を振り返ることはしないですね。設計されていないと、なおさら話しにくそうです。

中原

そうなんです。きちんと上司側にも部下側にも、1on1が何なのかインストールされないと難しいんです。1on1のなかで何をするか、上司にも部下にもインストールしなければ、それが人材開発のために用いられることはありません。そして、経営へのインパクトも期待できないのです。上司だけが1on1研修を受けても、部下は何が何だかさっぱり分かりません。上司が急に面談しようなんて言うと、部下はビックリして身構えてしまいます。

リリー

上司から言われたら何かミスしたかな……とか思ってしまいそうです(笑)

中原

そうなると、上司だけではなく、部下側にも1on1はこんなものだよとインストールする必要があります。昨今、1on1を導入する企業が増えていますが、練習や試行錯誤の機会がたくさんなければ、現場には浸透しないと思います。組織のコミュニケーションの在り方を変えるって、ものすごく大変ですよ。

リリー

人事担当者もあれやこれやと試行錯誤が必要そうですね……。まずは実践あるのみですね!

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1on1を効果的にする3つのポイント

リリー

1on1をする上で、上司が工夫できるポイントはありますか?

中原

部下を変えようと思ったら、あの手この手を使わないといけませんが、今回は3つのポイントをお伝えします。

まず1つ目は「相手の話を聞ききる」ことです。途中で質問したくなったり、突っ込みたくなったり、時に腹が立ってくることがあったとしても、まずは、一旦全部聞くことが大切です。相手が話してくれないことには、1on1は成り立ちませんので、まず全部聞き終えることが大切なのです。

1on1のポイント

リリー

途中で質問されたり、話を遮られたりすると、急に自分のペースで話しにくくなってしまいますね。

中原

2つ目は「プチチャレンジを作る」ことです。どうやっても達成できないようなレベルのチャレンジを渡しても意味がありません。なるべく早く成果を実感できるようなプチアクションを一緒に作ってみてください。例えば、「このイベントなんだけど、やってみない?」などと話を持ち掛けてみるのもいいと思います。1on1を通じて、プチチャレンジを一緒に準備し、フィードバックをしてあげることが大切です。

1on1のポイント

リリー

背伸びしたら届きそうなチャレンジは、達成感が味わえそうです!

中原

3つ目は「細かな声かけをする」ことです。気になることがあったら、その都度、伝えてあげることが大切です。意識したいのは、改善点だけではなく、いいところも伝えるということです。フィードバックは事実をそのまま言うことが前提ですが、ネガティブよりもポジティブなことを言ってあげる方が伸びる人もいます。ですので、ポジティブなことにも積極的に目を向け、一言でいいので、気づいたときに伝えてみてください

1on1のポイント

リリー

褒める風土がある職場、素敵ですね!

その施策を通して「どんな絵を見たいか」

リリー

1on1について学ぶために、おすすめの教材はありますか?

中原

入門書としては、本間浩輔さん(現Zホールディングス株式会社 シニアアドバイザー)が書かれた『ヤフーの1on1』(ダイヤモンド社 刊)をおすすめします。本間さんはヤフー株式会社の人事責任者として、1on1の取り組みを先駆けて導入し、日本に広めた方です。コミュニケーションのポイントをはじめとして、1から細かく解説しているので、読んで実践しやすい1冊だと思います。

リリー

弊社の書籍をおすすめいただき、ありがとうございます! 私も改めてじっくり読んでみたいと思います。

最後に、「1on1」をこれから導入してみようと思っている人事担当者に向けて、何かアドバイスはありますか?

中原

重要なのは、人事施策は従業員に対するメッセージであるということです。ただ世間の流行りだから導入するというのではなく、経営戦略を実現するために、従業員にとってほしい行動が施策に反映されていないと意味がありません。ですので、1on1を導入する際にも、その取り組みによって、現場でどのような光景を見たいのかを考える必要があると思います。例えば、「職場で上司が〇〇〇の行動をしている」のように「誰の/どの行動を変えたいのか」の解像度を高くして、形にしていくことが大切です。実際に、現場でどんな絵になっていてほしいのかを常にイメージしながら、1on1をやってみてください。

リリー

ただ流行りで導入するのではなく、理想の現場をイメージして施策を実施することが大切なのですね!

今回も貴重なお話ありがとうございました!

3テーマにわたるインタビュー企画にご協力いただいた中原淳先生、心より感謝申し上げます!

中原

あっ、これで終わってもらっちゃ困るんです。かつて西村さんは、わたしの「指導学生」でしたが、いまや「ビジネスパートナー」です。ビジネスパートナーとしては、わたしはあなたに成長をしてほしいと願っています。最後にビジネスパートナーから、あなたへの問いを差し上げます。

リリー

えっ!

中原

あなたにとって、新入社員として過ごした1年間を振り返ってください。これまでが起こり、今、何を感じていて、これから何をしたいですか? 近いうちに、自分の身近な同僚や上司と1on1をしてみてください。また逢うときまでの、これが宿題です。

リリー

宿題をありがとうございます! この機会に、1年目の貴重な経験を振り返り、言語化することに時間をかけて取り組んでみます。成長した姿で、またご一緒できること楽しみにしております! 本当にありがとうございました!

記事構成・編集

株式会社ダイヤモンド社 HRソリューション事業室 西村衣織 (リリー)

2001年3月生まれ、愛知県出身。立教大学 経営学部 国際経営学科を卒業後、2024年に新卒入社。大学時代は、人材・組織開発について学び、「人や組織の成長に貢献するコンテンツ作りに挑戦したい」という思いから入社。趣味は、旅行とグルメ。

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