一回のテストや研修、あるいは一冊のテキストが、ビジネスパーソンの人生を大きく左右することもある。その責任を常に忘れず、妥協のない商品を作り続けていく
- ダイヤモンドHRD総研
ダイヤモンド社のHRにかかわる事業の歴史は長い。1957年に日本初となる就職情報誌『ダイヤモンド会社就職案内』を刊行し、1965年には職場適応性テスト「DPI」をリリース。その後も、さまざまなテストや教材などを世に送り出し、今日に至る。今回は、ダイヤモンド社のHRソリューション事業を統括する事業室長の井上直が、ダイヤモンド社の人材開発・教育事業の掲げる戦略と、今後の展望を語った。
出版営業からHRソリューション事業室へ、HR事業の可能性を強く感じた
私が人材開発・教育事業に携わるようになったのは、3年前からです。それまでは20年近く、いかに本や雑誌の売上を伸ばすかを考える業務を専門にやって来たので、人材開発・教育事業とは、ほとんど接点がありませんでした。
そこから3年間向き合ってきた中で、日々実感させられているのは、人材開発・教育事業には非常に大きな可能性がある、ということです。この3年間は、そのままコロナ禍のタイミングと重なりますが、企業の人事の方から話を聞くと、課題は年々増えており、しかも複雑化しています。HRにかかわる企業がやるべき仕事は、今後ますます増えていくはずです。
HR業界には大小さまざまな企業がありますが、その中において、ダイヤモンド社の規模は決して大きいほうではありません。また、ダイヤモンド社における人材開発・教育事業は、出版事業に比べるとかなり絞った人数で運営されています。それにもかかわらず、長年この業界で生き残ることができているのは、特色ある商品を提供し続け、その商品を多くのクライアント企業が支持してくださっているからです。
現在、お付き合いのあるクライアント企業様は、全国で5000社以上にも及びます。その中には、ダイヤモンド社のテストや教材を、もう何十年も採用し続けてくださっている企業もあります。ベストセラーの書籍と同じように、HR業界でも、良い商品は時代を超えて長く愛されるということがよくわかります。
こうしたベストセラーかつロングセラーのテストや教材を武器として、人材開発・教育事業を、ダイヤモンド社のもっと太い柱となるように育てていくことが、長期的な目標です。
ダイヤモンド社の強みは「アカデミックな知見」がベースにあること
ダイヤモンド社のテストや教材の最大の特長は、必ず“アカデミックな知見”が入っているところです。1960年代に初めてリリースした職場適応性テスト「DPI」もそうですが、ダイヤモンド社の人材開発・教育事業では、発足当初から大学教授などの専門家に協力を仰ぎ、その知見を取り入れながら商品を開発してきました。
HR業界には、さまざまなアプローチで作られた商品がありますが、ダイヤモンド社はあくまで、専門家の研究・調査によって得られたデータをベースに、論理的な根拠を持った商品を提供することにこだわっています。多くのクライアント企業も、このこだわりに共感し、信頼を寄せてくださっているわけですから、今後も今の路線を突き詰めていく方針に変わりはありません。
ダイヤモンド社のHRソリューション事業室には、専門家と現場をつなぐ独自のネットワークを持ち、この分野への造詣も深いメンバーが揃っています。そういう人間が開発の最前線に立っているからこそ、商品の質を一定以上に保つことができている、と言ってもいいでしょう。
“メディアの作り手”としてのノウハウは、出版社が人材開発・教育事業を手掛けるメリット
ダイヤモンド社は出版社なので、企業向けのテストや教材だけでなく、一般の書店に並ぶHRの専門書を自社で作ることも可能です。HR業界の第一線で活躍する研究者の書籍を、ダイヤモンド社がスムーズに刊行できるのは、人材開発・教育事業において強固なつながりがあるからです。
私はこれまで出版営業として、どうすればより多くの本を幅広い読者に届けられるか、というところに重きを置いていました。ですが、HRの専門書というのはそれと対照的で、企業の人事担当者など、ピンポイントのターゲットに深く刺さるようなタイプの本です。その分、たくさん売れるとは行かないものの、熱い反響をいただくことも多い。人材開発・教育事業にかかわるようになって、出版社にとってはどちらのタイプの本を作ることも重要であり、果たすべき責務だと感じるようになりました。
出版社が人材開発・教育事業を手掛けるメリットは、ほかにもあります。たとえば「HRオンライン」というメディアを立ち上げた際は、出版社としてこれまでに多数のメディアを手掛けてきたことで、蓄積されていたノウハウが役立ちました。
「HRオンライン」は自社の商品を宣伝するためのメディアではなく、人事のサポートにつながるような情報の発信を目指しています。コンテンツは、その時々で人事担当者が直面しているであろう、ホットなテーマ、課題にかかわるもの。あるいは、人材育成に成功している企業に取材し、成功事例として取り上げる記事なども作っています。こういったものを社内で作れるのは、メディアの作り手であるダイヤモンド社の強みです。
また、ダイヤモンド社のベストセラー書籍をベースとした研修も提供しています。出版事業のコンテンツと人材開発・教育事業の融合ということで、これもダイヤモンド社らしい取り組みと言えるかもしれません。
全国の販売代理店と、製販一体のチームとして商品を作り上げていく
このように、人材開発・教育事業ではさまざまな商品・サービスを手掛けていますが、もっとも強化を図っているのはテスト事業です。テストを強化しているのは、私たちがクライアント企業の人材採用や育成を、長期にわたってサポートしていきたい、というビジョンを持っているからです。
テストは原則として、一回使ったらそれで終わりになるというものではなく、何年も続けて使うことによって、意義が出てくるタイプの商品です。そのため、クライアント企業との継続的な関係性を作りやすいのが特徴と言えます。
実際、ダイヤモンド社のテストを長年使い続けてくださっている企業とは、その時々で持ち上がってくる課題の解決策を、膝を突き合わせて共に考えるような関係性を築けています。企業とタッグを組み、より良い人材開発や教育のあり方を追求するというのは、私たちがこの事業に取り組むうえで、もっともやりがいを感じられる部分の一つです。
このようなお付き合いができる企業を増やしていくためには、ダイヤモンド社の商品を、より多くの企業に知っていただく必要があります。とはいえ、ダイヤモンド社で手掛けているのは商品開発からプロモーションまで。実際に商品をお客様のところに届けていただくのは、全国の販売代理店にお任せすることになります。
ここで重要なのは、「作り手」と「売り手」を分断せず、両者が製販一体のチームという意識を持ってやっていくことだと考えます。というのも、企業の人事と直接かかわる販売代理店には、さまざまな企業側からのニーズや抱えている課題などが、ダイレクトに伝わってくるからです。それをダイヤモンド社が漏れなく受け取ることができれば、商品開発や改良に活かし、よりよいソリューションを提供することにつながっていきます。
成功しているメーカーは、業種を問わず、開発やマーケティング、営業が、常に喧々諤々の議論を交わし、意志疎通ができているものです。この形を作るため、ダイヤモンド社としても、さまざまな現場の貴重な意見に耳を傾ける必要がある、と感じています。
本や雑誌だけでなく、人材事業でも産業界への貢献を目指す
ダイヤモンド社は、もともと本や雑誌にかかわりたいという人間の集まりです。皆が「より良く働き、生きるためのヒントになるような一冊を作りたい。本や雑誌には、そういう力がある」と信じて、この会社に入ってきています。
私自身もその一人ですが、今は人材開発・教育事業においても、同じ思いを持っています。一回のテスト、一回の研修、一冊のテキスト、それらがユーザーの人生に与える影響は、ごくわずかなようでいて、実は非常に大きい。その人のビジネスパーソンとしての人生に影響を与える、という点では、本や雑誌と根本のところは同じです。私たちはその力の大きさを常に忘れず、重みを感じながらこの仕事に取り組む責任があります。
産業界への貢献が、ビジネス系出版社であるダイヤモンド社の創業以来の目指すところです。本や雑誌の形だけではなく、人材事業でも産業界に貢献することはできるでしょう。
もっとも、これまで少人数でコツコツとやって来た事業ですから、今後も背伸びせずに無理のない事業運営を心がけていきます。自分たちが「正しい」と信じられる商品を真摯に開発し、それを売り込むのではなく信頼してくださる企業に届ける。そうやって、これまでと同じように、これからも着実にこの事業を育てていければと思っています。
株式会社ダイヤモンド社 取締役 HRソリューション事業室長 井上直
1971年2月生まれ。新卒で証券会社に入社後、ソフトウェア流通会社を経て、1998年7月にダイヤモンド社に入社。株式会社ダイヤモンド・コミュニケーションズ代表取締役社長、株式会社ダイヤモンド・ヒューマンリソース取締役を兼務。
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