経験学習とは?経験学習サイクルと実践のポイント【松尾睦先生がわかりやすく解説】
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- ダイヤモンドHRD総研

ダイヤモンドHRD総研・かけだし研究員リリーが、HR領域のエキスパートのもとへ学びに行く企画。いまさら聞けない、人事のキーワードについて教えてもらいます。第4回目は、松尾睦先生に「経験学習」について語っていただきました。(聞き手/ダイヤモンド社 HRソリューション事業室・西村衣織)
今回のインタビューは……

リリー
ダイヤモンドHRD総研・かけだし研究員の「リリー」です。

イノ
アシスタントの「イノ」だシシ!

リリー
本連載では、「人事・HRの領域でよく聞くけれど、実はぼんやりとしか理解できてないかも(汗)」なキーワードに関して、かけだし中の私が身体を張って、エキスパートの先生方に“諸突猛進”インタビューします。人事のみなさんに“こっそり”インプットいただける記事をお届けします!

イノ
今回の先生はどなただシシ?

リリー
第4回は、青山学院大学の松尾睦先生のところに突撃インタビューします! 松尾先生は、経験学習の第一人者でして、『職場が生きる 人が育つ「経験学習」入門』や『部下の強みを引き出す 経験学習リーダーシップ』などを執筆されています。
私自身、大学生の時に、松尾先生の論文や書籍に大変お世話になりましたので、今回直接お話を伺うことができ、大変楽しみです!

イノ
ひょっとして、今回のキーワードは…?

リリー
もちろん、今回のキーワードは「経験学習」です! 私も4月から社会人になり、環境が大きく変わったので、新しい経験との出会いの連続です。この貴重な経験をしっかりと学びに変えていきたいです! ということで、松尾睦先生に、「経験学習」についてアドバイスをもらいたいと思います!

イノ
レッツゴーだシシ!
成長のカギである「経験学習」とは

リリー
初めまして! ダイヤモンドHRD総研・かけだし研究員のリリーです。

松尾
青山学院大学 経営学部の松尾睦です。

リリー
本日は貴重なお時間をいただき、誠にありがとうございます! どうぞよろしくお願いいたします!

松尾
よろしくお願いします。

リリー
早速ですが、今回は「経験学習」についてお聞きしたいです。振り返るイメージがありますが、そもそも「経験学習」とは、何でしょうか?


松尾
端的に言えば、「経験学習」とは、経験したことを振り返り、学んで活かすことを言います。デイビット・A・コルブが提唱した「経験学習サイクル」というモデルでは、➀「経験」をする → ②「内省」する(振り返る)→ ③「教訓」を出す → ④教訓を新しい状況に「応用」する、という4つのステップがあります。このサイクルを回すことで人は経験から学びます。この経験学習サイクルを上手く回す力こそが成長のカギを握っているのです。

リリー
経験学習は、成長につながるのですね! サイクルと言えば、ビジネスパーソンの基礎スキルとしてよく耳にする「PDCAサイクル」とは、何が違うのでしょうか?

松尾
最も大きな違いはP(計画)があるかどうかだと思います。PDCAでは、P(計画)で立てた目標を達成できたかどうかが重視されます。しかし、目標へのこだわりが強くなるので、C(評価)とA(改善)での振り返りの視野が狭くなってしまいがちです。
一方、経験学習では、目標を達成したかどうかだけでなく、業務のプロセスの中で起きたさまざまなことが振り返りの対象になります。目標以外の予測していなかったことなども含めて、幅広く振り返りを行うことが特徴です。


リリー
経験学習では、目標達成だけにフォーカスするのではないのですね!

松尾
達成したいこと、身に付けたいスキルなど、自分のゴールを持つことは、とても大切です。PDCAと経験学習サイクルを組み合わせて、目標を意識しつつ、それ以外の経験にも着目して振り返り、幅広い視点から学ぶことが大切だと思います。

リリー
私も経験学習とPDCAのバランスを意識していこうと思います!
「経験学習サイクル」をより効果的にするポイント

リリー
「経験学習サイクル」には4つのステップがありましたが、それぞれのステップで意識すべきポイントなどはありますか?

松尾
まず、➀「経験」のポイントは、取り組む業務や課題が、自分にとってチャレンジングなものであることです。簡単すぎる課題だと、振り返る必要もないので、少し背伸びして、挑戦的な経験をすることが大切です。言い換えれば、「頑張ればできそう」なレベルのものに挑戦するということですね。


リリー
ストレッチ経験を得るためには、どうしたらいいでしょうか?

松尾
与えられた仕事も、目標の設定次第でストレッチ経験にすることが可能です。例えば、西村さんの連載も、「怒られない程度に記事を書く」という目標もあるでしょうし、「読者から反響がある記事を書く」という高い目標を設定することもできるかと思います。同じ仕事でも、人によって目標設定は変えることができるのです。日々の仕事において、意外と受け身の業務も多くあると思いますが、任された仕事を創意工夫し、目標値を少し上げていくことで成長につながります。例えば、1人でやっていた仕事を優秀な先輩とコラボしてレベルアップさせるなど、ある程度自由が利く部分を膨らませることで、ストレッチ経験を積むことができるでしょう。

リリー
なるほど! 仕事自体がストレッチであるべきというイメージがあったので、難しい印象を受けましたが、どんな仕事も意識や工夫次第でストレッチになるのですね!

松尾
次に②「内省」のポイントは、俯瞰することです。例えば、何か問題が生じたときには、「あの人のせいでこうなった!」と人のせいにしてしまいがちですが、そうではなく、「自分はどうだったか」「相手はどうだったか」「あの状況は…」と俯瞰して、起きた出来事をちょっと上から見ることが大切です。


リリー
嫌なことがあると、とことん落ち込んでしまうタイプなので、俯瞰は、まさしく私の課題ですね……。

松尾
そういう時は、まず感情を静めることが大切です。怒ったり、悲しんだり、感情的になっているときには、正しい評価ができなくなります。少し気持ちを落ち着かせて、クールダウンしてから、事実ベースで何が起きたのかを幅広く考えることが大切です。基本的には、自分視点と相手視点で事実を整理してみると、俯瞰しやすくなります。

リリー
俯瞰した内省をするためには、「感情を静めること」と「相手の立場で事実を見ること」が大切なのですね。

松尾
最後に、③「教訓」と④「応用」はセットで考えることが大切です。ポイントは、汎用性が高い教訓を引き出すことです。例えば、学生が、準備不足のために授業の課題が提出できなかったという教訓を得た場合、バイトやサークルでも同じような「準備不足」という問題が生じる可能性があります。一つの状況や出来事で得た学びを、幅広く、さまざまな状況に適用できるような教訓を引き出すことが大切です。


リリー
他の場面にも応用できる教訓を見つけることが大切なのですね。

松尾
もう一つのポイントは、アクションベースであることです。本間浩輔さん(現Zホールディングス株式会社シニアアドバイザー)は「漠然とした教訓ではなく、行動ベースの教訓を引き出すことが大事」とおっしゃっていましたが、具体的な教訓が応用のしやすさを左右するといえます。
プライベートな話になってしまいますが、私は靴を買うときにサイズが合わないことが多く、かれこれ3回ぐらい同じ失敗を繰り返しています。最近、さすがにこのままではいけないと思い、3つアクションを出したんです。➀定員さんの「ちょうどいいですね」という言葉を信じない、②3サイズぐらい比較する、③返品できるように箱を持って帰るという教訓です。その結果、2足連続でサイズぴったりの靴と出会っています!

リリー
先生も日常の中で経験学習の連続なのですね(笑)。
良い経験学習には、フィードバックが必要

リリー
ちなみに、松尾先生が考える「良い経験学習」とは、何ですか?

松尾
先ほどお伝えした通り、①適度にストレッチな経験をし、②高い視点で俯瞰しながら内省し、③本質的で具体的な教訓を引き出す形で、経験学習サイクルを回すことです。これをクリアしていれば、成長につながる経験学習ができていると言えるでしょう。

リリー
ポイントを押さえる経験学習サイクルが大切なのですね。

松尾
もう一つ加えるとしたら、他者からのフィードバックを取り入れることです。私のゼミでは、毎回授業を始める前に、3~4人で先週の印象に残った経験や学びを振り返ってもらいます。他のゼミ生からの何気ないコメントや発言によって、内省の幅が広がります。
他者からのフィードバックをもらえるというだけでなく、自分の経験や学びを言語化して、他の人に共有することで、自分の考えが改めて整理され、気づきが増えるというメリットもあります。会話だけでなく、ブログなどで文章に書き起こすのも効果的です。

リリー
そういえば、私も振り返りをすると、「過去のあの経験とつながっているかも」と思いだすことが多かった気がします!
「成功」を重視した振り返りで自分を動機付ける


リリー
振り返りは大事だと理解しても、ついおろそかにしてしまいがちです……。経験学習を継続するためのポイントはありますか?

松尾
経験の振り返りが負担にならないように、自分を動機づけて習慣化することも重要です。そのために、失敗だけでなく、成功も振り返るのがおすすめです。日本人は、失敗ばかり振り返ってしまう人が多く、「反省会」が好きですよね。

リリー
…うう、心当たりがあります。

松尾
成功の振り返りは気恥ずかしいですが、ウェルビーング的にも良い効果があり、自分のモチベーションにもなります。意識して成功と失敗の両方に目を向けると、自分を動機づけすることができ、習慣化しやすくなります。
例えば、ポジティブ心理学と呼ばれる研究において有名なエクササイズに「スリーグッドシングス」があります。毎日よかったことを3つ思い出して、なぜそれが起きたかを振り返るというものです。メンタル的にすごく良い効果がありますので、ぜひ試してみてください。

リリー
失敗したときは、自然と振り返りができますが、成功した時こそ意識して振り返りをします! 経験学習をおこなう、おすすめの頻度やタイミングはありますか?

松尾
少なくとも週1回はやった方がいいですね。個人差はありますが、頻度を定める際には、「毎週何曜日」など、曜日を固定した方が習慣化されやすいと思います。自分の負担にならないタイミングを見つけ、マイルールを定めるといいですね。

リリー
ちなみに、松尾先生のマイルールは何ですか?

松尾
毎朝、前日のことを振り返るようにしています。犬の散歩をしながら10分ほどで振り返り、教訓を出しています。見返すために、日記を書く方法もありますが、私は文章にするのが面倒臭くて、続かないタイプです。例えば、駅に行くまでの道や犬の散歩、通勤電車など、人によって一番振り返りやすいタイミングがあると思いますので、それを見つけて習慣化するといいと思います。

リリー
私もいろいろな方法を試して、自分に合ったルールを見つけてみようと思います。経験学習の世界は深くて広いですね、ワクワクしてきました。次回も経験学習のことを引き続きお聞きできればと思います。本日は、ありがとうございました!



記事構成・編集
株式会社ダイヤモンド社 HRソリューション事業室 西村衣織 (リリー)
2001年3月生まれ、愛知県出身。立教大学 経営学部 国際経営学科を卒業後、2024年に新卒入社。大学時代は、人材・組織開発について学び、「人や組織の成長に貢献するコンテンツ作りに挑戦したい」という思いから入社。趣味は、旅行とグルメ。
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