チームビルディングとは?最強のチームをつくる3ステップ【中村和彦先生がわかりやすく解説】
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- ダイヤモンドHRD総研

ダイヤモンドHRD総研・かけだし研究員リリーが、HR領域のエキスパートのもとへ学びに行く企画。いまさら聞けない、人事のキーワードについて教えてもらいます。第9回目は中村和彦先生に「チームビルディング」について語っていただきました。(聞き手/ダイヤモンド社 HRソリューション事業室・西村衣織)
今回のインタビューは……
リリー
ダイヤモンドHRD総研・駆け出し研究員の「リリー」です。
イノ
アシスタントの「イノ」だシシ!
リリー
本連載では、「人事・HRの領域でよく聞くけれど、実はぼんやりとしか理解できてないかも(汗)」なキーワードに関して、かけだし中の私が身体を張って、エキスパートの先生方に“諸突猛進”インタビューします。人事のみなさんに“こっそり”インプットいただける記事をお届けします!
イノ
今回の先生はどなただシシ?
リリー
前回は、南山大学の中村和彦先生に「組織開発」について詳しく教えていただきました。今回も引き続き、中村先生に突撃インタビューします!
イノ
今回は何を教えてもらうシシ?
リリー
今回のキーワードは「チームビルディング」です。組織開発の第一人者である中村先生に、よりよいチームづくりのポイントを伺いたいと思います!
イノ
レッツゴーだシシ!
チームビルディングとは「チーム作り」である
リリー
中村先生、今回もよろしくお願いいたします!
中村先生
よろしくお願いします。
リリー
今回は「チームビルディング」についてお聞きしたいです。入社時の研修などで実施されているイメージですが、「チームビルディング」とは、何でしょうか?

中村先生
チームビルディングとは、「チームづくり」のことで、より協働できるチームになるための取り組みです。
リリー
チームワークを高めるイメージですか?
中村先生
そうですね。「よりチームワークが発揮できるチームになること」と言い換えてもよいでしょう。
チームビルディングのメリット
リリー
職場でのチームビルディングは、どのようなメリットがあるのでしょうか?
中村先生
1つ目は、職場での信頼感が高まることです。お互いを理解し、信頼できる関係性が築けると、困ったときに助けを求めやすくなります。例えば、他人に遠慮しがちで一人で抱え込みやすい人が、「助けてほしい」と言いやすくなれば、メンタルヘルス的にも良い効果がありますし、サポートを得ることで結果的に成果にもつながりやすくなります。
リリー
質問しやすい・話しやすい雰囲気の職場は、とても働きやすそうですね!
中村先生
2つ目は、新しいアイデアが生まれやすくなることです。一人で考えるよりも、チームのメンバーと意見交換することで、個々のノウハウを共有することができ、活発な議論の中から革新的なアイデアが生まれやすくなります。例えば、営業職であれば、お互いの成功事例を共有し、ともに学びを深めることで、組織全体の成果を高めることができます。
リリー
協働によって革新的なアイデアが生まれるんですね!
ベストなチームビルディングの3つの階段
リリー
理想的なチームビルディングとは、どのようなものですか?
中村先生
チームビルディングには3段階あります。第一段階は「信頼」です。相手のことが分かっていて信頼できる状態です。第二段階は「協働」です。メンバー間で協力して働くことができている状態です。第三段階は「切磋琢磨」の関係です。お互いにフィードバックしたり、「もっとこうしようよ」と言い合える段階です。
チームビルディングは、最後の「切磋琢磨」の段階まで到達できると理想的です。お互いに学び合い、遠慮なく意見を交わせる、非常に良い関係性です。
リリー
切磋琢磨の段階にたどり着くためには、どうしたらよいのでしょうか?
中村先生
まず「信頼」から「協働」へ進むためには、チームで共通の目標を持つことが不可欠です。同じ目標がなければ、協働することはできません。
次に「協働」から「切磋琢磨」へ進むためには、「何でも言い合える関係」と「ともに成長したいという意識」が必要です。「何でも言い合える」というのは、相手を傷つけるためではなく、ともに成長するための建設的なフィードバックを意味します。
お互いに遠慮があっても協働はできるのですが、切磋琢磨の段階においては、上司にも意見を伝えられるような、お互いを高め合う姿勢が求められます。
リリー
切磋琢磨は、チーム全員で成長したいという意識が必要不可欠なんですね!
チームビルディングの取り組み方
リリー
チームビルディングは具体的にどのように進めていくのでしょうか?
中村先生
まずは、相互理解と信頼感を高めることから始めます。例えば、ランチタイムにプライベートな話をするなど、お互いを深く知るための機会を設けることが多いですね。
リリー
第一歩としては、相手のことを知って理解することがポイントなのですね。
中村先生
次に「協働」の関係へ進むためには、チームのビジョンや目標を設定したうえで、それを達成するために「どのようにサポートし、関わっていくのか」という行動目標を立てることが大切です。
組織開発の手法に「役割マトリックス」というものがあります。仕事や手順を明確にしたうえで、誰が何をやるのか、困ったときには誰がサポートするのか、誰がその報告を受けるのかといったことまで決めます。誰が何をやるかだけだと「個業化」につながるので、周囲のサポートまで含めて決めることで、一人の仕事にしないことが重要です。
リリー
担当者とサポートする人までを決めるのがポイントなのですね。
中村先生
役割を決める過程の中で、みんなで話し合うことも非常に重要です。マネジャーが一方的に決めるのではなく、全員で決めることで「みんなでやる」という意識が生まれます。マネジャーは、役割マトリックスを提案し、それをもとにチームで対話しながらマトリックスを決めていきます。「チームとしてどのように関わりたいか」「チームとしてどんな状態を目指したいか」をみんなで話し合うことこそがチームビルディングです。
目標を達成するためには、土台となる組織に焦点を当てなければなりませんが、業務ばかりが重視され、それを支える組織・チームには光が当たらないことがほとんどです。
リリー
前回お話しいただいた、コンテントとプロセスの話と重なりますね。
中村先生
最後に「切磋琢磨」の関係を築くためには、相互フィードバックの時間を設けることが重要です。フィードバックというと、耳の痛い“スパイシーな”フィードバックをイメージしがちですが、ポジティブなフィードバックをすることも大切です。どちらかだけになるのではなく、両方のバランスをとることを意識しましょう。
いずれの段階においても、注意すべきは、「楽しいだけで業務につながらないチームビルディング」です。アイスブレイク的な取り組みだけでなく、どのように協働を高めていくかという意識を持つことが大切ですね。
リリー
フィードバックは、言いにくいことだけでなく、良いところも伝える、とても大切な視点ですね。
チームビルディングの「意味づけ」をする
リリー
チームビルディングに取り組むうえで、上司や人事の立場で意識すべきことは何でしょうか?
中村先生
重要なのは「意味づけ」をすることです。チームビルディングに対して、「なんで忙しいのにこんなことやるんですか?」といった疑問を持つ人は必ずいます。そうした人たちに、「私たちはこんなチームを目指しています」と、目指すべき姿を語れることが重要です。語り方に正解はありませんが、「なぜチームビルディングが必要なのか」という意味をそれぞれの職場や組織に合わせて伝えます。
また、人事担当者が「意味づけ」をできていたとしても、マネジャーが部下に対して自分の言葉で伝えることができるかは大きな課題です。マネジャーが納得して、自分の言葉にできないと、「また人事にやらされている」「マネジャーは人事の指示でやっている」という不信感があっという間に広がってしまいます。そのため、人事としては、マネジャーが意味づけできるように、しっかりとサポートをすることが重要です。
リリー
人事は、単なる「お願い」にならないように、マネジャーと連携をすることがカギになりそうですね。
中村先生
ある企業では、「組織開発」という堅い言葉ではなく、「いいチームをつくろう」という伝え方をしています。「みんなで楽しく一緒に仕事できたほうがいい」という考え方を、人事や経営層からマネジャーに共有します。これは、質的な意味づけですが、非常に分かりやすいですよね。マネジャーも「人事が言うからやらなければ」ではなく、「チームで一緒に仕事をすることは大事で、それが結果として業績につながる」と自分の言葉で語ることができるのがポイントです。チームづくりは業務の基盤となる部分ですが、業務そのものではないため、意識的に「なぜこれをやるのか」という意味づけが欠かせません。
リリー
業務は自然と取り組めますが、業務そのものではないことこそ意識してもらう工夫が必要ということですね。
組織開発の学びはシンプルではない
リリー
チームビルディングを導入しようと考えている人事担当者に向けて、何かアドバイスはありますか?
中村先生
おそらく他の部署から異動された方は、チームビルディングと聞いても何をすべきかまったく分からないと思います。なぜなら、自分自身が経験をしたことがないからです。人は、経験したことがないことをなかなか実行できません。
まずは、さまざまな方法で学ぶことです。知識の理解と手法の体験、この両方が必要不可欠です。本を読むだけでは知識の理解はできても実践はできません。スキルアップのためには、ワークショップや講座に参加して体験することが必要となります。
もう一つは、ネットワークを築くことです。新しく組織開発の部署に配属された人は、情報を得ることができるネットワークを持っていません。組織開発について情報交換ができるようなコミュニティに参加するのも手ですし、外部の講座には、修了生のネットワークがあることも多いので、そうした場で学ぶのもよいでしょう。
リリー
本や講座、コミュニティなど、さまざまな学びの場に飛びこんでみることですね!
中村先生
組織開発の難しい点は、一つの手法だけでは解決できないことです。コーチングのように一つのシンプルな手法ではなく、さまざまな方法、考え方、実践がセットになった体系なので、一筋縄ではいきません。「どうやって組織を支援するか」という大きな体系なので、1日2日で学べるものではありません。そのため、本格的に学びたいのでれば、組織開発の理論と実践を体系的に学べる、連続した講座に参加することをおすすめします。
以前は日本ではこうした講座が少なかったのですが、今はいくつか存在しているので、組織開発が学びやすい環境になってきています。
リリー
組織開発は、一つのやり方を学ぶのではなく、全体像を理解することが重要なのですね。今回も貴重なお話ありがとうございました!
「組織開発」と「チームビルディング」という2テーマにわたるインタビュー企画にご協力いただいた中村和彦先生、心より感謝申し上げます!

記事構成・編集
株式会社ダイヤモンド社 HRソリューション事業室 西村衣織 (リリー)
2001年3月生まれ、愛知県出身。立教大学 経営学部 国際経営学科を卒業後、2024年に新卒入社。大学時代は、人材・組織開発について学び、「人や組織の成長に貢献するコンテンツ作りに挑戦したい」という思いから入社。趣味は、旅行とグルメ。
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