「態度能力」とは何か? 知的能力や技能・技術的能力に加えて、人の能力を測る「第三のモノサシ」を解説

  • ダイヤモンドHRD総研

「態度能力」という言葉をご存じだろうか。昨今、関心を持つ人事担当者が多く、知的能力や技能・技術的能力に加えて、人の能力を測る第三のモノサシとして用いられている。ここでは、そんな態度能力について解説していこう。

知的能力や技能・技術的能力と、それを発揮する能力が共存するとは限らない

  「態度能力」は、人の能力を測るモノサシの一つ。ダイヤモンド社『職場適応性テストDPI』の生みの親である、心理学の権威・本明寛先生(早稲田大学名誉教授)による造語だ。

 能力というと、「高学歴」「IQが高い」といったいわゆる知的能力は、誰にでも理解しやすい。さらに「英語の検定試験でハイスコアをとっている」「前職でこんな技術を培ってきた」といった実績を伴う技能・技術的能力も、目に見える形でレベルがわかる。

 だが、現実には超一流大学を卒業した人が、職場において常に高いパフォーマンスを出せるわけではないし、英語の試験でハイスコアをとった人が、英語でスムーズに商談を進められるとも限らない。むしろ、高い知的能力や技能・技術的能力を有しながら、それを職場で再現できないケースは、かなりよくある。

 そのため、人事担当者は採用時に“知的能力や技能・技術的能力を職場で発揮できる能力”をチェックするのが望ましい。それが態度能力――すなわち、積極性や協調性、情緒の安定性といった部分にかかわる力だ。

相手のすべてをわかろうとせず、仕事の場面での“態度”だけに注目する

「態度」という言葉に目を向けてみよう。

  態度とは、人が状況に応じて示す行動(言葉・表情・動作)のこと。当たり前の話だが、態度は常に一定ではない。家族と過ごしているプライベートな空間での態度と、職場(公の場)での態度は異なるのが普通だ。

 人は誰しもその時々で、その場にもっともふさわしい態度を自然に選んでいる。仕事をするうえでマジメな態度をとるのは、それをしなければ給与をもらえないという状況に置かれており、働き手としてそのような“役割”を演じることを期待されているからだろう。

 役割期待、あるいは社会的要請に加えて、態度を左右する要素となるのがその人本来の性格だ。プライベートな場面では、ナマケモノだったり生真面目だったりといった、持ち前の性格が態度に出やすくなる。

 要するに、態度とは状況に応じて変化する不確定なものであり、表層的な態度を見るだけでは、その人の性格や本質を含めた全体像を掴むことはできない。まして、採用の場面での数回の面談などから、相手のすべてを理解しようなどというのは、どだい無理な話だ。

 それに、その人があらゆる場面で示すさまざまな態度の中で、採用担当者が本当に知っておくべきなのは、仕事の場面における態度だけだ。たとえば、演劇では舞台上での役者の演技力が重要になる。その役者が舞台から降りたときにどんな人物なのかは、芝居を成功させる要素にかかわってこない。

 採用する人材を見定めるうえでも、重要なのは“職場という舞台で力を発揮できるかどうか”。つまり、態度能力(舞台で力を発揮する力)がどれくらいあるかだ。職場を離れたときに見せる側面については、無理にわかろうとしなくていいだろう。

パーソナリティの構成要素

態度能力はテストによってレベルを可視化することができる

 本来は消極的な性格であっても、職場においては別のペルソナをかぶり、積極的な行動をとって会社に貢献することができるのならば、それは優れた人材と言える。そのような態度をとる能力があるなら、態度能力は高いということになる。

ダイヤモンド社の『職場適応性テストDPI』では、そんな態度能力を測定して数値化することができる。「とある場面で、どんな行動をとるか」を問う数多くの設問に答えると、その人の積極性や協調性、慎重性、責任感といった、態度能力の特性項目の度合いがわかる仕組みだ。

 たとえば、積極性という資質は、学歴や英語のテストのスコアのように、パッと見てレベルが判定できるものではない。資質に形はないが、仮に積極性を測る質問が10あったとして、それで積極的な行動傾向が平均よりも多ければ、その人の積極性は高いと見なすことができる。態度能力を測ることで、その人のすべてがわかるわけではないが、活躍度の期待値のようなものは見えてくる。

 また、態度能力は本人の努力や教育などによって、後天的にも伸ばせる力だといわれている。現状、知的能力や技能・技術的能力が高いものの、職場でそれを発揮できていない人材がいる場合に、態度能力をチェックしてみよう。チェックの結果で見えてきた“改善の余地がある特性”に合わせて、それを補う研修などのフォローを行うことも、視野に入れていくといいかもしれない。

今回の記事で登場した 「職場適応性テストDPI」

職場適応性テスト DPI

職場にふさわしい態度を獲得しているか、また、その態度を実際の職場で発揮できるかを示します。態度能力を測定できる唯一の適性検査。

「態度能力」は株式会社ダイヤモンド社の登録商標です。

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テスト開発担当者

蓬田 尚志

株式会社ダイヤモンド社 人材開発編集部 部長

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