適性検査の導入に際しての基礎知識
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- ダイヤモンドHRD総研

多くの企業の採用活動では、複数の面談と様々な種類の検査が並行して用いられます。執筆時に確認した調査データによると、2025卒の採用活動では8割超の企業が適性検査を導入していました。どのような検査であれ、適性検査の導入は必須であるといえるでしょう。本記事では、採用活動における適性検査の導入から活用方法について解説します。
適性検査の選び方
適性検査の導入にあたってまず必要なことは、適切な適性検査を選択することです。適性検査には、複数の種類があります。態度・性格・気質やストレス耐性を測定するパーソナリティテスト、基礎学力や考える力を測定する知的能力テスト、パーソナリティテストと知的能力テストの双方を含む総合適性テストです。

「応募者が職場でどのような行動をとりやすいのか知りたい」と考えるのであれば、パーソナリティテストを選択します。ここで知的能力テストを導入すると、テストの結果と知りたい内容が異なり、適性検査を導入する意味が薄れてしまいます。「適性検査では応募者の基礎的な言語能力を見よう」とするのであれば、選ぶべき適性検査は知的能力テストとなります。導入の目的や確認したいことに合わせて、適切なものを選択することが重要です。
採用基準の設定
適性検査を選択した後では、採用基準の設定を行います。今回はパーソナリティテストの活用方法を解説します。
採用基準は、求める人材像とパーソナリティテストを紐づけて設定します。テストの受検結果には複数の診断項目が並びますが、その中でも特に重視されたい診断項目があるはずです。
ここからはパーソナリティテストの1つである「DPI」を例に説明します。
ある企業で求める人材像が「①決められたワークフローを確実に踏むことができ、②チームワーク力がある人」であったとします。「①決められたワークフローを確実に踏む」に関連する診断項目は、規則を守る傾向をみる「規律性」や、感情に振り回されずにいられる傾向を測る「感情安定性」です。また、「②チームワーク力がある人」には、全体を考えた行動を取るかをみる「協調性」が関連します。そこで、重視する診断項目には規律性・感情安定性・協調性の3つを設定していきます。このように求める人材像と診断項目を照らし合わせ、関連する診断項目を採用基準にします。

求める人材像から採用基準を設定する方法以外にも、社内の優秀人材とその他の人材にテストを受検いただいた結果を比較し、差が大きい診断項目を参考に考えることもできます。
左のグラフのように受検者を2つのグループに分けて平均を比較します。このグラフでは「活動性」と「指導性」に差が見られ、優秀層はこれら2つの診断項目が特に高いことがわかります。そこで、「活動性」と「指導性」を重視する診断項目に設定します。
採用活動でテストを活用する場合は、重視する診断項目に対して合否の線引きを決めることも必要です。DPIの結果は5段階で表示され、5が高く1が低いと診断します。先ほどの例のように採用基準で重きを置く診断項目が「活動性」だったとき、世の中の平均と同じくらい活動性のある人を採用したければ「活動性3」以上を採用基準とします。また、活動性がほとんど見られない人のみを不採用としたい場合は「活動性2」以上を採用基準に設定します。
初年度は基準を的確に定めることが難しいかもしれませんが、1年間運用すれば母集団の傾向はわかるはずです。次年度以降は傾向を参考にしながら、より明確な基準を設定していくことも可能でしょう。 テストで採用基準を設ければ、明確に測定できる基準での判定が可能となります。これは、採用活動に適性検査を導入する1つのメリットです。
結果の見方
採用基準を設けてテストを実施していくと、テスト結果が全体的に低い応募者が出てくるかもしれませんが、テストの結果が低いことが一概に「悪い」わけではありません。
DPIやストレス耐性を判定するDISTでは、社会や仕事における一面の優位性を示す行動傾向を測定しています。そのため、テスト結果が高いほど良い面が表れやすいということになります。しかし、テストで測定する仕事の面での優位性が、必ずしも企業内の評価として「優秀な人」「良い人」になるとは限りません。
例えば、DPIの活動性が高い方は仕事面では非常に高く評価されますが、対人的な押しの強さが社風に合わないこともあり得ます。テスト結果の高い人がそのまま社内の優秀人材になるかどうかは、企業により異なってくるのです。
また、DPI・DISTで測定する態度能力やストレス耐性は、経験や努力で変化します。テスト結果はある一時点での受検者を評価したもので、受検者の限界を示すわけではありません。受検時に低い診断項目があったとしても、入社後の経験や努力で能力を伸ばしていけるでしょう。
評価の高低のみに着目するのではなく、社内人材との相性や今後の伸びしろも考慮しながらテスト結果を確認されると良いでしょう。
面接での活用
採用活動でのパーソナリティテストは、スクリーニングのためだけではなく、面接の参考資料としても活用いただけます。面接でテスト結果を踏まえた質問をすれば、受検者の人物像をさらに掘り下げていくことができます。
このようにテストと面接をどちらも実施していくと「テスト結果は悪いが、面接で会った感触は良い」というようにテストと面接の結果が合わないことも出てくるでしょう。この場合にどちらの結果を優先するかは、各企業での判断となります。
テストと比べると、面接からのほうが得られる情報量は多いものです。テストでわかることは、テストが測定している範囲に限定されます。またテスト結果は、そのテストが持つ評価基準で判定されたものです。一方面接では、テストの測定内容を超えて見える部分があります。表情や振舞いなどは、テスト結果だけではわからない部分です。
おわりに
情報量ではデメリットのある適性検査ですが、メリットには統計的な裏付けがあることや、客観的な評価を行えることが挙げられます。導入される際は、適性検査の特徴を踏まえた運用も重要です。
ダイヤモンド社の適性検査は、サンプル受検をご用意しております。適性検査を未導入であれば、一度サンプル受検を試していただくことで運用のイメージを掴んでいただけると思います。お気軽にお問合せください。

株式会社ダイヤモンド社 HRソリューション事業室 鈴木七穂
立教大学大学院経営学研究科修了後、2024年に新卒入社。大学での学びから人材開発・組織開発に興味を持ち、大学院でも引き続き専攻。人・組織の可能性が広がることに関わりたいという思いを持ち、HRソリューション事業室へ。趣味は旅行。
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