辞めない・折れない人材の見極め方 | 接客・販売職に適したストレス耐性とは

ダイヤモンド社 HRソリューション事業室長 蓬田尚志

更新日:

  • ダイヤモンドHRD総研

近年、多くの企業が「採用人材の早期離職」という課題に直面しています。特に、「接客・販売職」がメインとなる宿泊業・飲食サービス業・小売業などにおける就職後3年以内離職率は40-50%にも及びます[厚生労働省]。人手不足が加速する中、企業はどのようにして「折れない人材」を見極めればよいのでしょうか? 本記事では、それらの課題解決における「ストレス耐性」の重要性について解説します。(ダイヤモンド社 HRソリューション事業室)

第1章 就職活動の変化と求められる採用戦略

早期化・長期化する就活戦線

2026年卒の採用・就職活動は、前年度と比較してさらなる早期化が進んでいます。大学3年生の春ごろ(4~5月)には多くの学生が就職について考え始め、翌年2月時点の内定取得率は3分の1を超えている状況です。学生と企業の双方が「早く早く」という焦燥感に駆られ、できるだけ早く採用・就職活動のスタートを切ろうとする傾向が強くなっています。

「そこそこ」で決める学生

採用・就職活動のスケジュールだけでなく、学生の職業選択や働くことに対する価値観も大きく変化しています。
現代の学生には顕著な特徴があります。それは「就職活動を早く終えたい」というタイパ意識と、「うまくいかなければやり直せる」という楽観性です。転職市場の活況を背景に、第一志望でなくても「そこそこ期待できる」企業で就職活動を終える学生が増えています。
かつて就職は「一世一代の決断」でしたが、今の学生は「入ってから決めればいい」と考える傾向にあります。企業にとっては、採用しても早期離職のリスクが常につきまとう、厳しい採用環境と言えるでしょう。

適切な人材を「素早く」「クリアに」探す

現在の学生は就職活動にも「効率性」を求める傾向があります。見返りのない時間やコストをかけることを嫌い、情報収集にも余念がありません。だらだらと選考を続ければ、選考途中で離脱してしまうリスクが高まります。
こうした状況において、企業側も採用戦略の見直しが必要です。求められるのは「適切な人材を素早くクリアに探す」というアプローチです。じっくりと時間をかけて選考するのではなく、「どのような人材を探しているのか」を明確に定め、効率的に選考を進める必要があります。

第2章 接客・販売職における適切な人材とは?

そもそも「折れない人材」とは何か?

さて、「適切な人材を素早くクリアに探す」と言うのは簡単ですが、どのようにして「適切な人材」を明確にすればよいのでしょうか? ここでは「接客・販売職」に焦点を当てて、そこで求められる能力やパーソナリティを考えてみましょう。
早期離職という問題においては、「折れる人材」 「折れない人材」という表現がよく使われます。分析によれば、仕事でつらい体験をした人のうち、辞めた人を「折れた」と表現し、まだ働き続けている人を「折れていない」と判断しているようです。ここで重要なのは「つらい体験」とは何かです。

接客・販売職特有のストレス要因

接客・販売職における「つらい体験」として、まず想起されるのは、カスタマーハラスメントを含む顧客対応でしょう。理不尽な言葉を投げかけられ、心が疲弊していく状況は、間違いなく大きなストレス要因となります。常に顧客の視線にさらされ、細やかな配慮を求められることによる「人に見られている」プレッシャーも無視できません。
しかし、現場におけるストレスは、これらだけには留まりません。接客・販売職において、従業員の振る舞いは売上に直結します。商品知識や販売スキルの習得、売上目標の達成といった「接客という役割」に対するプレッシャーや、店舗運営の責任者としての売上管理やマネジメントに伴う「役割や責任」に対するプレッシャーなども挙げられます。

上司・同僚から受けるストレスのほうが大きい

接客・販売職には「顧客対応におけるストレスが大きい」というイメージがあります。販売員を対象にしたアンケート調査では、ストレスを感じる場面の約7割が対人関係という結果も出ています。しかし、内訳を見てみると、そのうちの6割は「お客様ではなく、上司・同僚から受けるストレス」という回答になっていました。

接客・販売職は、先ほど挙げたようなさまざまなストレス要因に直面します。新入社員が1~2年で店長候補になることも少なくありませんが、その場合、店舗運営や組織マネジメントのストレスはさらに大きくなるでしょう。つまり、どれだけ顧客対応が得意でも、それだけで接客・販売職に適応できるわけではないということです。

多面的・多角的な視点で「適切な人材」を捉える

ここまで見てきたように、接客・販売職における「適切な人材」とは、単に顧客とのコミュニケーションが得意なだけでは十分ではありません。上司や同僚との関わり、知識やスキルの習得、売上目標に対するコミット、店舗運営やマネジメントなど、さまざまなストレス要因に対する耐性や向き合い方を身につけていることが重要だと言えます。
このように「適切な人材」を明確にするにあたっては、その職務内容や職場環境を多面的・多角的な視点で捉え、そこで求められる能力やパーソナリティを深掘りしていくことが求められます。

第3章 ストレスの科学的理解と測定

ストレスとは「主観的」なもの

ここまで接客・販売職が直面するストレスについて述べてきましたが、そもそも「ストレス」とは何なのでしょうか?
ストレスという現象は、実は客観的に存在するものではありません。何らかの刺激を受けた際、それを「自分にとって脅威だ」と認識したときにストレスが発生します。
例えば、顧客や上司から強い口調で叱責された際に、不安感や自責の気持ちを抱きやすい人はストレスを感じてしまいます。逆に、同じ刺激でも「この人は変わっているな」と受け流せる人は、脅威と認定しないためストレスを感じません。つまり、ストレスは極めて主観的なものなのです。

主観的なストレス認知を見極める

「客観的にはつらい状況」であっても、本人がつらいと感じるかどうかは別問題です。自分が苦手なことを、隣の人は平然とこなすこともあります。したがって、採用において重要なのは、客観的な「つらい体験」の有無ではなく、その業務特有のストレス要因に対して、その人がどう反応するかという「主観的なストレス耐性」を見極めることです。
「主観的なストレス耐性」を見極めるには、専門的な検査ツールの活用が有効です。自社の業務特有のストレス要因を明確にしたうえで用いることで、適切な人材を「素早く」「クリアに」探すことが可能になります。ここではダイヤモンド社のストレス耐性テストを用いた事例をご紹介します。

接客・販売職における理想的なストレス耐性

ある百貨店における主任クラスの接客・販売員のデータを分析したところ、対人ストレス耐性、対課題ストレス耐性、感情のコントロール、自己効力感のすべてが高いという結果が出ました。このプロフィールを理想形として、採用段階でこの形に近い人材を探すことが一つの方法です。

一方で、金融業などの他業種は、これとは明確に異なるプロフィールを示します。同じ会社であっても、職場や職種によって求められる能力は異なる場合もあります。業種や業務の特性に応じたストレス耐性の見極めが重要になります。

ダイヤモンド社のストレス耐性テスト DIST

仕事をする上で直面するストレス原因を4つに分類し、それらに対する耐性を受検者の普段行動から測定します。また、様々な場面で発生したストレスをどのように解消しようとするかの特徴を詳らかにし、どういった対処をしがちなパーソナリティであるかを診断します。

ストレス耐性テストの詳細はこちら

業務適性との組み合わせ

次のステップとして、業務適性の評価も重要です。業務適性とは「職場における振る舞いが、接客・販売業において好ましい行動を取りやすい人」を意味します。企画系、接客販売系、営業系など、職種ごとの適性を測定できる検査ツールを活用し、素養の高い人材を素早く見極めます。その上で、面接で人となりをしっかり確認する時間を確保することが、効率的な採用戦略となります。

まとめ 科学的アプローチで採用を最適化

辞めない・折れない人材を見極めるためには、単なる「対人ストレスに強い人」を探すだけでは不十分です。接客・販売職特有の多様なストレス要因を理解し、それらに適したストレス耐性プロフィールを持つ人材を科学的に評価することが求められます。
早期化・効率化が進む採用市場において、適性検査とストレス耐性テストを活用して素早く素養のある人材を絞り込み、面接で深く人となりを見極めるこの二段構えのアプローチが、これからの採用成功の鍵となるでしょう。

ダイヤモンド社 HRソリューション事業室長 蓬田尚志

2015年にダイヤモンド社 HRソリューション事業室に適性検査等の開発担当として中途入社。適性検査、研修、教材など人事支援業務、支援ツールの制作・開発に携わる。現在は、ダイヤモンド・ヒューマンリソース株式会社 取締役を兼し、開発部門と現場営業部門の両立場を管掌。

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